抗脂肪肝作用に代表される肝保護物質がコーヒー中に存在するとの指摘があるが、その実体のみならず、コーヒーに含まれる各成分やその体内動態に対する理解すら未だに乏しいのが現状である。本研究では、機能性をもたらす分子実体の理解を目指して、脂肪肝抑制作用を有するコーヒー成分の探索を行うことを目的として企画された。 本計画において代表者らは、非ターゲットメタボロミクスを駆使した「コーヒー由来成分の網羅的体内動態解析」と、独自に見出した「よりヒトに近い肝臓を有する脂肪肝モデル動物」を組み合わせ、コーヒーが有する潜在的健康増進効果の分子実体に迫るべく検討を進めた。 研究開始2年目となる平成30年度は、独自に見出した「よりヒトに近い肝臓を有する脂肪肝モデル動物」について論文発表を行った。コレステロール輸送体として知られるNiemann-Pick C1-Like 1(NPC1L1)をヒトと同じように肝臓に発現しているという点で、よりヒトに近い肝臓を有するトランスジェニックマウスにおいて、高脂肪食誘導性の脂肪肝が早期に認められたため、当該マウスが新たなNonalcoholic fatty liver disease (NAFLD)モデルマウスとして有用である可能性と合わせて報告したものである。平成30年度においては、平成29年度に実施した混水投与に加え、コーヒーの混餌投与も行い、生体サンプルの回収・解析を進めた。得られた成果は、コーヒーが有する潜在的健康増進効果のさらなる理解のみならず、新規NAFLDモデルを活用した新規肝保護物質の探索につながる可能性を秘めていると考えられる。
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