研究課題/領域番号 |
17K19900
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
樋口 京一 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (20173156)
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研究分担者 |
澤下 仁子 信州大学, 学術研究院医学系, 助教 (40359732) [辞退]
森 政之 信州大学, 学術研究院医学系, 准教授 (60273190)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | 老化 / マウス / 健康増進効果 / コエンザイムQ10 / アミノレブリン酸 / 機能性食品 / 寿命 / 生理活性物質 |
研究実績の概要 |
高齢者の疾患の基盤にある生命現象は『老化』であり、老化の進行を遅延できれば、ほとんどの加齢関連疾患を抑制できると考えられている。究極の老化抑制効果の検証は寿命(最大と平均)の解析である。研究代表者(樋口)らは老化促進モデルマウス(SAMP1)への還元型コエンザイムQ10 (CoQ10H2)の投与が促進老化や、加齢性難聴などの加齢疾患の進行を抑制することを明らかにしたが、①真に老化抑制効果を有することの検証と②科学的メカニズムの解明には、「徹底した寿命・老化解析」が必須である。十分な匹数の、C57BL/6マウス(標準系統)とSAMP8マウス(促進老化、サルコペニア、学習記憶障害のモデルマウス)にCoQ10H2を投与して、厳密な寿命解析と多角的な老化関連指標の解析を実施する。CoQ10H2の老化抑制効果の検証のみならず、他のサプリメントや機能性食品の老化抑制効果の評価への新たな基準の提供を目指す。 平成29年12月からスタートしたCoQ10H2のC57BL/6Jマウスへの投与実験を継続しており、9ヶ月齢で第1回目の屠殺を行なった。飼育に関して大きなトラブルはないが、雌マウスを用い、ケージ内の匹数を制限したにも関わらず、一部のマウスでfighting等による創傷、脱毛、体重減少が観察されている。平成31年3月までの体重の推移には投与群、コントロール群で差異はない。老化度は、皮膚所見や脊椎湾曲で投与群に改善効果が認めれれたが、年齢を重ねると効果の消失が認められた。9ヶ月齢屠殺群での解析では、 腹腔内ブドウ糖負荷試験などの生理的な指標での有意差は認められていない。ALA含有飼料は安定性などの基本的解析が終了し、飼料とC57BL/6Jマウスの搬入が行われ、平成31年1月から実験を開始した。これまでの経過では体重、飼料摂取量、その他の変化や問題は認めれれていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度(平成29年度)科学研究費採択決定後に、CoQ10H2とALAの供給を依頼したカネカ(株)とSBIファーマと研究計画に関する協議を開始したが、実験の条件決定のための検討に予想以上に時間を要した。特にCoQ10H2とALAを固形飼料へ添加し、マウスへ投与する方法を取ったため、飼料への添加時、作成時、保管時、飼育室での投与放置期間での安定性の検討や、3者間の秘密保持契約や研究成果の帰属契約に時間を要した。さらに研究分担者の澤下が平成29年12月に退職したこともあって、研究の進捗が計画から遅れた。これらの問題はほぼ解決し、まず投与飼料(CoQ10H2含有)を作成し、平成29年12月にはC57BL/6Jマウスを購入し、飼料の投与を開始した。平成30年度は、これらのマウスの解析を行なった。個別飼育のストレスや群飼におけるfightingを避けるために、雌マウスを用いて1ケージ内のマウス匹数を少なくして、慎重に飼育を継続しているが、やはり創傷、脱毛、体重減少を示すマウスが存在する。それらのマウスは研究対象から除かざるを得ない状況である。進捗状況としては、予定通りに9ヶ月齢で各群12匹屠殺した。次回は令和元年の6月に18ヶ月齢で屠殺し、9ヶ月齢のサンプルと合わせて解析を行う。これまでに各群4匹のマウスが自然死している。老化の進行に関しては皮膚や脊椎湾曲に関してCoQ10H2投与の効果が認められた。ALA飼料に関しては、基本的な成分分析や安定性に関して使用に耐えるデータが得られたので、飼料の作成と投与を開始し、問題なく継続している。マウスの飼育スペースが限られているため、CoQ10H2の屠殺後にそのスペースを利用して、順次ALA用コントロール群もスタートできる予定である。以上のように飼料の作成の遅れのために、スタートがすぐには切れず進捗が遅れたが、その後は順調に経緯している。
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今後の研究の推進方策 |
飼料の作成と投与方法に関する問題が解決したCoQ10H2含有飼料のC57BL/6Jマウスへの効果に関する実験が平成29年12月から、さらに飼料作成方法と安定性の解析が遅れていたALA含有飼料の効果に関する実験も平成31年1月から開始した。CoQ10H2およびALA含有飼料投与群と試験物質の溶剤のみを含有したコントロール群のそれぞれで、寿命観察グループ(36匹)と、9ヶ月、18ヶ月齢屠殺群(各12匹)の計120匹に関して、2回/週の飼料交換と摂取量の測定、2ヶ月毎の体重測定と老化度評点測定を実施して、老化の進行を観察している。9ヶ月齢(CoQ10H2は実施済み)と18ヶ月齢(CoQ10H2と ALAは令和元年に実施予定)で屠殺したマウスは屠殺時に、1)グルコース負荷試験と体重、筋肉や脂肪組織を含む各臓器重量の測定を行い、病理組織作成と生化学的解析のために血液と各臓器を採取し、-70℃での保存を行う。これらの試料を用いて、2)多角的老化関連指標;◎血液生化学的指標、◎糖代謝関連指標、◎脂質代謝関連指標、◎酸化ストレスマーカー、◎筋肉代謝関連指標、◎慢性炎症指標、◎オートファジーなど蛋白質恒常性指標、◎細胞老化指標、◎ミトコンドリア機能について解析を行う予定である。寿命観察グループでは、平均寿命、最大寿命(最も長生きしたマウス4 匹の平均寿命)、生存曲線、Gompertz 関数、老化度評点などの寿命特性を解析する。マウスは1 日1 回観察し、fighting による影響が大きいマウスは除外するが、体重の急激な減少、腫瘍の拡大、激しい消耗が見られた場合には屠殺して寿命とする。すでに先行するCoQ10H2給与群では4匹程度の死亡例が出ている。 動物実験施設での飼育スペースの確保しながら、とALA+CoQ10H2含有飼料の投与など、実施が遅れている試験を開始する。
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次年度使用額が生じた理由 |
科学研究費採択決定後(平成29年6月)に、CoQ10H2とALAの供給を依頼したカネカ(株)とSBIファーマと研究計画に関する協議を開始したが、研究の条件決定のための検討に予想以上に時間を要した。特にCoQ10H2とALAを固形飼料へ添加し、マウスへ投与する方法を取ったため、飼料への添加時、作成時、保管時、飼育室での投与放置期間での安定性の検討や、3者間の秘密保持契約や成果の帰属の契約に時間を要した。これらの問題がほぼ解決し、C57BL/6Jマウスを購入したのが、平成29年の12月であった。ALA関連の安定性の検証はさらに遅れて、飼料を作成し、マウスへの投与を開始したのは平成31年1月であり、実験の開始が遅れた。現在は安定して、飼育、観察、解析などは計画された方法に従って順調に推移している。当初予定していたマウスの購入費用、飼育費用、試料含有試料の作成に関する費用が計画よりも少ない額であり、平成30年度以降に使用することになった。平成30年度はCoQ10H2群での屠殺やALA含有群の開始が遅れたため、様々な解析を行うための試薬の購入資金が予定より少なかった。令和元年度はCoQ10H2と ALA投与群、コントロール群での屠殺マウスの試料を用いた解析を集中して行う予定であり、試薬の購入とマウスの飼育費用に使用する予定である。
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