研究課題/領域番号 |
17K19901
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
大橋 憲太郎 岐阜大学, 工学部, 准教授 (50332953)
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研究分担者 |
天谷 文昌 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60347466)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | ゲノム編集 / 小胞体ストレス |
研究実績の概要 |
今年度は、昨年度より検討をすすめてきたゲノム編集技術を用いることで標的遺伝子の下流に薬剤耐性遺伝子をノックインする方法を幾つかの細胞株にて検討した。これにより、遺伝子改変細胞を簡便かつ効率的に選択する系を樹立することが可能となった。とりわけ、2種類の薬剤耐性遺伝子を用いることで、小胞体ストレス応答に関わる ATF4およびGADD34の両遺伝子を改変した細胞株を樹立し、その性状を解析した。その結果、 ATF4欠損Neuro2a細胞においてはツニカマイシン刺激によるGADD153発現誘導が著しく抑制され、アポトーシスマーカーであるcleaved caspase-3も抑制された。一方、GADD34欠損細胞においてはcleaved caspase-3の抑制が見られなかった。 また本系に基づいて、他の小胞体ストレス応答因子改変細胞も樹立し、それら因子の発現制御機構等の解析に取り組んだ。 更に、このノックイン技術を応用し、低分子量ルシフェラーゼNanoLuc誘導体フラグメント, HiBiT, を内因性ATF4のC末端に付加した細胞株を樹立した。既にATF4タンパク質は、ユビキチン-プロテアソームシステムにより発現制御される不安定なタンパクであることが明らかとなっている。そこで、ATF4にノックインしたHiBiTタグに基づくNanoLuc活性を指標として、タンパク合成阻害剤やプロテアソーム阻害剤の影響を検討したところ、ウエスタンブロット法による発現解析と同様の結果が得られ、このHiBiTアッセイが簡便且つ高感度であることを示した。これらの知見により、今後の研究で、小胞体ストレス誘導性転写因子であるATF4の合成および分解に関わる因子のスクリーニングが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、昨年度より検討を続けてきたゲノム編集技術を幾つかの細胞株に応用することができ、その成果の一部を学術論文に発表した。また、今後のスクリーニングに有用な細胞株も樹立した。また、樹立した細胞株を用いたスクーニングに必要な各種遺伝子も準備しており、次年度以降に検討を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
ゲノム編集により樹立したATF4-HiBiT Neuro2a細胞を用いることにより、小胞体ストレス誘導性細胞死において中心的役割を果たすATF4の発現制御に関わる新規因子の探索を進める予定である。また、本ゲノム編集技術を用いることで、小胞体の機能不全と他のオルガネラ制御との関連を解析し、新たなストレス応答機構とその制御法を探索したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
萌芽研究の内定・配分が6月からであったので、当研究のスタートが若干遅れたことによる。また、得られた研究成果を学術論文に投稿するための準備や査読がやや遅れていることも影響していると考えている。研究自体は、おおむね当初の予定に従っており、スクリーニングに必要なコンストラクトおよび細胞株の樹立に繋がったので、繰り越した金額を次のスクリーニングおよび解析に繋げたいと考えている。
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