研究実績の概要 |
今年度は、一昨年度より進めてきた幾つかの小胞体ストレス応答因子に対するゲノム編集の知見を生かし、小胞体ストレス応答センサーの1つであるIRE1alphaおよび小胞体関連分解(ERAD)の主要因子SEL1Lに着目した。前者に関しては、昨年度まで使用してきたNeuro2a細胞にてIRE1alpha欠損細胞株を樹立し、その性状を解析した。また、市販されている4種類のIRE1阻害剤のIRE1特異性等も評価した。その結果、Neuro2a細胞におけるIRE1alpha欠損は、細胞増殖や一般的な小胞体ストレス応答には殆ど影響を及ぼさないことが明らかになった。一方で、検討したIRE1阻害剤の何れもが、IRE1非依存的な細胞毒性を示すことが明らかとなった。とりわけ毒性の強かった4u8Cは、IRE1alpha発現の有無に関わらず、オートファジーマーカーのLC3-II発現を誘導した。また、小胞体ストレス誘導剤ツニカマイシンとの共処理により、アポトーシスマーカーのcleaved caspase-9, cleaved caspase-3発現を著しく誘導した。後者のSEL1Lについては、HEK293細胞株にて欠損細胞を樹立し、その性状を検討した。とりわけ、小胞体局在性でゴルジ体障害により活性化されるとされているCREB3との関連を解析した。その結果、CREB3の分解にはSEL1Lを介するERAD系が深く寄与することが明らかとなった。
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