研究実績の概要 |
本年度、アデノウィルス(Ad)を用いて肝臓にSPARC (オステオネクチン) を強発現させ表現型を再検討したところ、Ad-SPARC過剰発現マウスでは脂肪組織の萎縮および中性脂肪含量増加によると思われる肝臓重量の増加が認められた。また予備実験同様、空腹時および随時血糖の低下がインスリン非依存的に認められた(insulin Fast 0.24±0.05 vs 0.27±0.05 ng/ml; ad lib 1.04±0.30 vs 0.40±0.14 ng/ml, p <0.05)。 そこでAd-SPARC 過剰発現マウスの肝臓での糖代謝関連遺伝子の発現レベルを網羅的に解析したところ、グルコキナーゼ(GK)、PAI-1の発現増加が認められた(GK 2.25±0.09 fold,PAI-1 12.9±1.85 fold; 血清PAI-1濃度 1.57±1.03 vs 10.18±4.03, p <0.05)。これらについて単離肝細胞や肝細胞株でAd-SPARCを感染させ検討したところ、GKやPAI-1の発現上昇が認められたため、SPARCがオートクリン、パラクリン両効果にてインスリン非依存的血糖降下に関連していることが示唆された。 一方、肥満糖尿病モデルob/obマウスの肝臓ではSPARCの発現上昇は認められなかった。高脂肪食のみやob/obマウスではNASHのような繊維化を伴う脂肪肝は発生しないため、そこでこれらのマウスにAd-SPARCを過剰発現させ、NASHのモデルとなるか検討するとともに、並行して約100名のNASH患者のサンプルにてSPARC遺伝子変異の検討を行い、H211Qを含む3個のcSNPと1個のrSNPを獲得した。
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