研究実績の概要 |
「死んでもなお、血液が固まらない」という突然死の共通病態に着目し、突然死症例における血管の状態を理解するため、プロスタグランジン(PG)やトロンボキサン(TX)といった各種生理活性物質量を指標に解析を進めている(核出生理活性物質の血中半減期は短いため、尿中の最終代謝物量を比較する)。 本年度は、各種生理活性物質(PGD2、PGE2、PGF2α、PGI2、TXA2)の尿中最終代謝打つ(tetranor-PGDM(PGDM)、tetranor-PGEM(PGEM)、tetranor-PGFM(PGFM)、2,3-dinor-6-keto PGF1α(DKPGF1α)、2,3-dinor TXB2(DTXB2))の標品を尿に人為的に添加し、尿中からの固相抽出条件と、LC/MS/MSによるイオンサプレッションへの影響や分離・検出条件の確立を試みた。まず、最も汎用的なC18カラムを選択し、最適な洗浄/溶出条件をスクリーニングした。その結果、PGDM、PGEM、PGFMは、40%メタノールで溶出しきるのに対し、DKPGF1αとDTXB2は、70%メタノールで溶出しきることが明らかとなった。そこで、上記の条件で溶出した際のマトリクス効果を評価した結果、いずれの最終代謝物もマトリクス効果が認められたものの、PGDM, PGEM, PGFMでは10%程度と低く、内部標準(IS)を用いることで補正が可能であった。その一方で、DKPGF1αとDTXB2のマトリクス効果は、ほぼ100%と高く、ISを用いても測定が困難なことが予想された。そこで、イオン交換カラムに変更し、最適化したところ、マトリクス効果が大きく低減し、良好な回収率で精製することが可能となった。 以上の検討から、二段階固相抽出法を応用することで、尿中のPN最終代謝物全てを一連の操作で精製し、一斉に評価する基盤技術を構築した。
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