研究実績の概要 |
「死んでもなお、血液が固まらない」という突然死の共通病態に着目し、突然死症例における血管の状態を理解するため、プロスタグランジン(PG)やトロンボキサン(TX)といったプロスタノイド量に着目して解析を進めている。具体的には、各種プロスタノイドの血中半減期は短いため、尿中の最終代謝物量を比較することで達成を図る。 昨年度までに、二段階固相抽出法(逆相固相抽出カラムで精製後、イオン交換固相抽出カラムで連続精製)を応用することで、各種プロスタノイド(PGD2、PGE2、PGF2α、PGI2、TXA2)の尿中最終代謝物(tetranor-PGDM(PGDM)、tetranor-PGEM(PGEM)、tetranor-PGFM(PGFM)、2,3-dinor-6-keto PGF1α(DKPGF1α)、2,3-dinor TXB2(DTXB2))を一連の操作で精製し、一斉に評価する基盤技術を構築した。 本年度は、確立した手法の有用性を評価すべく、まず、各種プロスタノイド(PGD2、PGE2、PGI2)をラットの頸静脈に投与し、尿から、最終代謝物の定量を試みた。その結果、頸静脈に投与した各種プロスタノイド量依存的に、最終代謝物が検出され、期待通りにin vivoで代謝を受けることが示されたと共に、尿中の最終代謝物量が血中のプロスタノイド量に反映されていることが示唆された。そこで次に、実際に、健常者の尿に適用したところ、PGDMとPGEMは検出できたものの、残りの最終代謝物は検出限界以下であり、高感度化の必要性が示された。本観点から、諸条件を最適化し、固相カラムからの抽出液を10-30倍に濃縮することで、感度も10-30倍向上させることに成功した。これにより、健常者の尿から、いずれの最終代謝物も検出できるようになり、プロスタノイドの発現変動プロファイルを理解可能になった。
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