研究実績の概要 |
「死んでもなお、血液が固まらない」という突然死の共通病態に着目し、突然死における血管の状態を理解するため、プロスタグランジン(PG)やトロンボキサン(TX)といったプロスタノイド量に着目して解析を進めている(各種プロスタノイドの血中半減期は短いため、尿中の最終代謝物量を比較する)。 昨年度までに、二段階固相抽出法(逆相固相抽出カラムで精製後、イオン交換固相抽出カラムで連続精製)を応用することで、各種プロスタノイド(PGD2、PGE2、PGF2α、PGI2、TXA2)の尿中最終代謝物(PGDM、PGEM、PGFM、DKPGF1α、DTXB2)を一連の操作で精製し、一斉に評価する基盤技術を構築・最適化してきた。 そこで、本年度は、確率した手法の実用性を検証するにあたり、クローン病に着目した。クローン病は、代表的な炎症性腸疾患の一つである。また、これまでに、トリニトロベンゼンスルホン酸で誘発されるクローン病モデルラットの尿中PGEMレベルが上がるといった報告がなされている。したがって、実際に、ヒトのクローン病患者においても、PGE2を始めとするPN発現量が変動し、尿中PN代謝物のプロファイルが健常者と異なっていることが考えられた。そこで、健常者とクローン病患者の尿から、PN代謝物の網羅的な定量を試みた結果、健常者とクローン病それぞれ5例に対して、いずれの代謝物も全て定量できた。さらに、変動を解析すると、PGDM, PGFM, DKPGF1α, DTXB2では、健常者とクローン病患者群で、有意な変動は認められなかったのに対し、PGEMについては、モデルラットでの先行研究と同様に、健常者に比較して、クローン病患者群で、有意に高値を示した。したがって、我々が最適化した定量系は、内在的な尿中PN代謝物をも一斉に定量が可能であり、疾患の発症・悪化に伴う変動も、検出しうることが示された。
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