研究実績の概要 |
本研究は、「レニン-アンジオテンシン(RA)系は血圧上昇を担う代謝系であり、アンジオテンシンI変換酵素(ACE)阻害が降圧作用の本体である」との従来説を覆し、血圧調節系としてのRA系の実証とAng代謝の正常化を指標とする新たな高血圧および関連疾患予防食品研究の創製を提唱するものである。そこで、当該年度では、高血圧発症に関わるRA系代謝物相関を最終目標とする上で重要となるRA系代謝物の一斉解析法の設定を試みた。 まず、内標準法を基本として質量分析(MS)法による一斉解析法を設定することを前提として、本研究で対象とするRA系代謝物に対して3位のVal残基を安定同位体標識した[13C5, 15N]-Valを用いてアンジオテンシン(Ang)代謝物(Ang (3-4), Ang (1-7), Ang (1-9), Ang II, Ang A, Ang I, Angioprotectin)までの全7種類)を安定同位体標識(m/z +6)したAng代謝物内標準を固相Fmoc合成し、獲得できた。Val-Tyrに対しては、TNBS誘導体化カラムスイッチングLC-IT-MS/MS法により、その他のAng代謝物に対しては直接LC-IT-MS/MS法による分析を試みた。その結果、一斉解析のための逆送系カラム分離条件、MS解析のためのMRMトランジット条件等を設定することができた。本法による検量線をもとにLODを求めた結果、Ang II, Ang (1-7)およびVal-Tyrでは500 fmol/mL、Angioprotectinでは1pmol/mL、Ang Aでは5 pmol/mL、Ang Iでは10 pmol/mLとなり、pmolレベルでの一斉検出が可能であった。
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