研究実績の概要 |
レニン-アンジオテンシン(RA)系は血圧上昇を担う代謝系であり、アンジオテンシンI変換酵素(ACE)阻害が降圧作用の本体である」との従来説を覆し、血圧調節系としてのRA系の実証とAng代謝の正常化を指標とする新たな高血圧および関連疾患予防食品研究の創製を提唱するものである。そこで、本年度では、RA系代謝物動態を解析するために重要となるRA系代謝物である一連のアンジオテンシン類(ANG I, Ang II, Ang(1-7), Ang A)の一斉分析法の設定を試みた。 まず、より検出感度を得られるために、溶離液添加剤を検討し、イオン化補助作用を有する3-ベンジルアルコールを添加し、LC-IT-MS/MS法による分析を試みた。その結果、対象化合物の正電荷付加が認められたが、検出レベルはpmol/mLであった。次に、本研究で設定したアッセイ系を用いて、ラット血漿中のアンジオテンシンの検出・定量を試みた。高血圧自然発症ラット(SHR、雄性、8週齢および40週齢)の循環血漿(1 mL)を氷冷アセトニトリルと同量混合してタンパク質を除去し、固相抽出カラム(Sep-Pak)により精製後、アッセイに供した。その結果、SHR循環血漿中からAng IIの検出が達成し、その量は8週齢において約12 fmol/mL, 40週齢において約150 fmol/mLであり、RA系代謝物動態と加齢(血圧亢進)との相関が示唆された。長期間に渡り継続的にラット循環系RA動態を網羅的に評価するためには、さらなる高感度化あるいは血漿サンプル量の増大(>1 mL)が必要であると結論付けられた。
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