研究課題
昨年度の研究により、1日2時間x2回の時間制限給餌を朝型と夜型のパターンでマウスに与えたところ、朝型群は夜型群に比べて強制水泳試験のうつ様行動が少なく、バーンズ迷路試験における記憶力が高いことが解明された。今年度はこのメカニズムを探るため、海馬における情動や記憶に関連する遺伝子の発現を解析した。解析した時計遺伝子のうち、Reb-erbaの暗期における発現が夜型群で朝型群よりも高かった。Reb-erbaはFabp7の発現を介して神経新生を調節するため、神経分化マーカーや神経栄養因子の発現を解析したが、朝型・夜型群の間に変化は見られなかった。また、細胞増殖マーカーであるBrdUの海馬における免疫陽性細胞数にも変化は認められなかった。そこで神経新生ではなく、神経機能の調節に変化が生じていると考えた。海馬のシナプス可塑性を調節するホルモンのシグナル伝達系を解析した結果、シグナル伝達阻害タンパク質の量が夜型群で朝型群よりも多かった。このシグナル伝達系の関与について引き続き解析していく必要がある。今年度はさらに、幼少期における時間制限給餌の影響が成熟後に及ぼす影響について解析した。離乳直後のマウスを用いて、朝型・夜型の時間制限給餌下で4週間飼育してまず行動解析を行い(T1)、その後は自由摂食にしてさらに4週間飼育してから行動解析を行った(T2: T1とは別個体)。T1において、オープンフィールド試験における総移動距離は夜型群で朝型群よりも多かったが、この違いはT2では見られなかった。強制水泳試験ではT1とT2ともに夜型・朝型群間の差は見られず、幼少期の給餌時刻がうつ様行動に及ぼす影響は少ないことが示唆された。
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British Journal of Nutrition
巻: 120 ページ: 1432-1440
10.1017/S000711451800291X
http://www.agr.kyushu-u.ac.jp/lab/lrmb/