慢性疲労症候群とは、原因不明の強い疲労が長期間におよび継続する病気である。未だに原因が不明であり、治療法だけでなく、客観的診断法も確立していないのが現状である。また、線維筋痛症との病態が重複している部分もあり、併発している患者も多い。実臨床においても慢性疲労症候群と線維筋痛症を区別できる専門医は少なく、結論が出せない場合も多い。 本研究の最終的なゴールは慢性疲労症候群の客観的評価系の確立であるが、複雑系疾患のため、患者リクルートに時間を要している。そこで、慢性疲労症候群との関連が深い線維筋痛症も含めた解析も行っている。 我々のヒト末梢血誘導ミクログリア様細胞を用いた解析の結果、貪食能および、貪食時におこるサイトカイン応答には健常群と患者群で有意な差は見られなかった。しかし興味深いことに、ATPで刺激した患者群のiMGでは、健常群と比べてTNF-αの遺伝子発現及び、タンパク濃度が有意に増大していた。さらに、ATP刺激後のTNF-α発現量と痛み及び精神症状を示す臨床学的パラメーターとの間に有意な相関が認められた。これらのことから、患者群ではATP刺激に対してミクログリアが過敏状態にあり、過剰活性化したミクログリアの産生するTNF-αが複雑な病態の中核のひとつである可能性が考えられた。 本研究により、ヒト末梢血誘導ミクログリア様細胞は、慢性疲労症候群と関係の深い線維筋痛症において臨床重症度も評価できる客観的評価系としての可能性が示唆された。
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