研究課題
肝臓病理学に基づいて NAFLD・NASH 発症マウスモデルを、ヒトにおけるファストフードを想定し、野生型(WT)マウスにフルクトース食餌および砂糖水を与えて作製を試みた。病理組織学的検査を行った結果、16 週間上記食餌を与える事によって、脂肪蓄積に伴う軽度線維化を呈する NASH を発症することが確認できた。我々は、miR-X は脂肪肝発症に関与する知見を得た。そこで、可変型ジーントラップ法およびCRISPR/Casシステムを用いて 全身性 miR-X KO マウスを2種類作製した。現在はフルクトース食餌および砂糖水を 16 週間・24 週間与えて、NASH 発症モデルの確立を行っている。一方、組織特異的 miR-X KO(miR-X cKO)マウスの作製のため、CRISPR/Casシステムを用いて flox を miR-X 領域に組み込んだ miR-X flox マウスの作製を行った。その結果、条件を満たす 2 系統の miR-X flox マウスの作製に成功した。生まれた各 miR-X flox マウスは、特に問題なく生存・繁殖している。miR-X cKO 作出のため 2 種類の Cre 発現マウスを導入した。導入された Cre 発現マウスは、問題なく繁殖している。ヒト NASH 発症過程における miR-X の発現動態は、未だ明らかにされていない。本研究では、長崎大学臨床研究倫理基準に従い、ヒト肝臓における miR-X 発現動態を qPCR 法を用いて検証した。その結果、脂肪肝および NASH における miR-X の発現は、正常肝と比較して、増加傾向を示した。
2: おおむね順調に進展している
本年度の達成目標であった、(1)NASH 発症マウスモデルの確立、(2)miR-X flox マウスの樹立、(3)Cre 発現マウスの導入・繁殖、(4)ヒト NASH 発症過程における miR-X の発現動態の検討について、滞りなく進捗している。以上の理由により、「おおむね順調に進展している」と判断した。
今後は 全身性 miR-X KO マウスおよび miR-X cKO マウスを用いて NASH 発症過程における詳細な役割を明らかにする。具体的には、(1)in situ hybridization 及び抗体を用いた細胞分離法による、NASH 発症過程における miR-X 発現細胞の同定および動態解析、(2)RNA シークエンスを用いた遺伝子発現解析及び miR-X 結合遺伝子の同定、(3)miR-X の生物学的役割の解析を推進させる。一方で、NASH 発症抑制効果に資する miR-X アンチセンスオリゴの開発及び改良を行う。これら解析結果を統合して、新たな科学的知見及び新規治療法の開発に繋げたいと考えている。
電動ステージの変更など含めた顕微鏡構築のための図面設計が来年度に持ち越されたため。H30年度には無事に完成する予定であるため、その際の支払いに用いる。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件)
Journal of Investigative Dermatology
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