研究課題/領域番号 |
17K19919
|
研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
花田 俊勝 大分大学, 医学部, 助教 (10363350)
|
研究分担者 |
花田 礼子 大分大学, 医学部, 教授 (00343707)
波田 一誠 大分大学, 医学部, 助教 (00546202)
西田 欣広 大分大学, 医学部, 准教授 (10336274)
|
研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
|
キーワード | ベージュ脂肪細胞 / CD105 / TGF-β |
研究実績の概要 |
ベージュ脂肪細胞は、寒冷刺激などの環境刺激によって白色脂肪組織中に出現し、発熱やエネルギー消費に関与する。白色脂肪細胞とは異なる細胞であり、独自の分化機構を有していると考えられるが、その分子機構については不明な点が多い。本研究では、ベージュ脂肪細胞活性化調節因子の探索並びにその分子機構の解明を目指す。マウス皮下白色脂肪組織より樹立した脂肪細胞株を用いてベージュ脂肪細胞の分化およびUCP1の発現に関与する分子の探索と、その分子機能解析を行なった。白色脂肪細胞とベージュ脂肪細胞間での遺伝子発現プロファイルによる遺伝子解析から、まずCD105に着目した。CD105が実際に生体内においてベージュ脂肪細胞前駆体特異的に発現し、細胞マーカーとして有用であるかFACS解析を行った。また、CD105の発現がベージュ脂肪細胞の分化に関与するのかCD105遺伝子欠損細胞を作成して機能解析を行った。結果として、マウス皮下白色脂肪組織には、CD105を発現する脂肪前駆細胞と発現しない脂肪前駆細胞に分けることができ、CD105陽性細胞は、UCP1を発現するべージュ脂肪細胞に分化することが判明した。CD105のべージュ脂肪細胞前駆体における機能を解明するためCRISPR/Cas9によりCD105遺伝子を欠損させたところ、エネルギー代謝効率の高いベージュ脂肪細胞への分化が抑制された。その分子機構として、Smad2の過剰な活性化が生じていることを見出した。CD105はTGF-βファミリー受容体に結合してそのシグナルを制御することが報告されているが、ベージュ脂肪前駆細胞においては受容体のシグナルを負に制御し、Smad2の活性化を抑制していることが示唆された。つまり、ベージュ脂肪前駆細胞ではCD105がSmad2の活性化を抑制することでベージュ脂肪細胞への分化が保持されていることが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
エネルギー燃焼型白色脂肪細胞「ベージュ脂肪細胞」の分化および活性化に関与する分子としてこれまでの我々の研究より見出されたCD105について研究を行い、ベージュ脂肪細胞分化に関わる新たなシグナル経路の同定に至り、論文として報告することができた。また、CD105以外のベージュ脂肪細胞分化関連遺伝子としてneuromedin B(NMB)を見出しているが、本分子に関して生体レベルでの機能を検討するためCRISPR/Cas9によるゲノム編集技術によりノックアウトマウスを作製、さらにNMB受容体にはNMB以外にGastrin-releasing peptide (GRP)が結合することが報告されているためNMBと伴いGRPノックアウトマウスの作製も行い、いずれも樹立に成功した。今後、これらのマウスモデルの解析を進める予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究計画では、これまで我々が行ってきたベージュ脂肪細胞の分化・活性化に関与する遺伝子スクリーニングの結果をもとに、これら分子が実際にベージュ脂肪細胞分化に関与するのか検証を行うことが目的である。今年度はCD105の重要性を証明することができた。今後はさらに他の候補分子についても検討を進める。その中でも特にneuromedin B(NMB)について、ノックアウトマウスを用いて解析を行う。ただし、NMB受容体はGastrin-releasing peptide (GRP)もリガンドとして認識するため、NMB遺伝子単独ノックアウトマウスでは表現型が隠されてしまう可能背がある。そこで、NMBと共にGRPもノックアウトマウスを作製し、ダブルノックアウトマウスを樹立して詳細な解析を行う予定である。すでに各ノックアウトマウスはCRISPR/Cas9によるゲノム編集技術により作製済みであり、現在交配を進めているところである。 NMB以外の他の候補遺伝子についても、ベージュ脂肪細胞株においてCRISPR/Cas9によりノックアウト細胞を作製し、ベージュ脂肪細胞分化活性化における関与についての解析を引き続き進めている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本研究計画にて計画していた遺伝子改変マウスの作製および飼育が、動物実験施設における微生物感染事故のため施行することができなかった。生じた次年度使用額は、当初計画していたマウスの作製ならびにその解析研究に充てる予定である。
|