研究課題
われわれは以前より腹膜播種によるマウス悪疫質モデルを用いて、糖質(Glc)と中鎖脂肪酸(MCT)の単独摂取における栄養介入にて検証を行っている。それらの結果では、Glc負荷では濃度依存的に腫瘍重量の増加を認めたが、骨格筋組織成熟度を反映するSDS可溶性重合myosin L1(MYL1)は糖濃度依存的に有意に高値を示した。一方、MCT負荷では、腫瘍増殖を抑制し、筋重量の維持を認め、骨格筋萎縮を阻止する傾向が認められたが、MYL1は低値を示す可能性を報告している。よって本研究はGlcとMCTの同時摂取による、マウス悪液質モデルにて抗腫瘍効果、骨格筋萎縮阻止効果を検証した。実験には、BALB/cマウスと同系の大腸癌細胞株であるCT26を使用し、1×10^6個を腹腔内へ接種した。Glc摂取は10%の糖水を自由飲水投与し、MCT摂取は、ラウリン酸(Lauric acid以下LAA)を通常食であるCE2に対し重量比で2%を混合し自由経口摂取とした。群分けは腹膜播種のみ施行した対象群(以下Con群)、LAA摂取群、LAA+10%Glc摂取群の3群とした。飲水量はGlc群で高値を示し、食事摂取量はLAA群が有意に高値を示したが、総カロリーの比較は有意差は示さなかった。LAA群において体重は有意に減少した。腫瘍重量はLAA群で有意に低値を示し、LAA+10%Glc群ではGlcによる腫瘍促進効果をLAAが抑制した。骨格筋重量および MYL1は LAA群、LAA+10%Glc群で有意に増加していた。骨格筋において糖質は有用であるが、腫瘍を持つ宿主には腫瘍増大のリスクがある。しかし、GlcとLAAを同時摂取させることで、Glcによる腫瘍増大を相殺し、さらに骨格筋では解糖系と酸化的リン酸化の両者が促進し骨格筋萎縮を予防する可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、検討予定の栄養素のうちエネルギー代謝のキーとなるグルコースと中鎖脂肪酸について検討を行った。アミノ酸、長鎖脂肪酸などは検討を開始している。
本年度の糖と中鎖脂肪酸およびその併用についてより詳細な検討を行うとともに運動負荷についても併用を行う。また、糖・中鎖脂肪酸とともに長鎖脂肪酸、アミノ酸、ビタミン等についても悪液質モデルによる検討を行う。
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