絶食時の視床下部においてFGF23が作用する細胞を同定するために、絶食時のマウスの側脳室にFGF23を投与し、視床下部におけるFGF23シグナルの活性化(リン酸化ERKやEgr1)を免疫染色法にて検討した。その結果、視床下部弓状核のAgRP陽性の神経細胞において、リン酸化ERK、及びEgr1の発現増加が認められた。以上の結果より、FGF23は、視床下部弓状核のAgRP陽性神経細胞に作用して、摂食調節などの機能を発揮している可能性が示唆された。 αKlothoヘテロ欠損マウスの自由摂食下と絶食条件において、体温、及び血糖値を測定した。その結果、自由摂食下では野生型マウスとαKlothoヘテロ欠損マウスの体温に差は認められなかった。野生型マウスは、絶食下において体温が低下することが知られているが、αKlothoヘテロ欠損マウスでは野生型マウスと比較して絶食時の体温低下が有意に抑制されていた。血糖値に関しては、自由摂食下と絶食下のいずれにおいても野生型マウスとαKlothoヘテロ欠損マウスとの間に差は認められなかった。以上の結果より、αKlothoは、絶食時の視床下部において、摂食調節に加えて体温調節を担っている可能性が示唆された。 αKlothoと体温調節の関連性を詳細に検討するために、小動物用温度調整機能付チャンバー(HC-100;シンファクトリー社製)を用いて野生型マウスを寒冷条件下に置き、視床下部におけるαKlothoの発現を検討した。4℃の寒冷条件下に7日間暴露することにより、視床下部におけるαKlotho遺伝子の発現が増加傾向を示した。以上の結果より、αKlothoは、視床下部において、絶食時に加えて寒冷環境下においても何らかの重要な作用を有する可能性が示唆された。
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