岡山県立大学において、ウシ糸球体内皮細胞由来の培養細胞株GEN-Tをシリコン製チャンバーに播種し、培養細胞伸展システムhttp://www.strex.co.jp/ を用いて機械的伸展刺激を加える系を構築した。その後、伸展刺激により発現誘導された12の遺伝子群についてタイムコース解析、各種メカノセンサーの阻害薬による解析を行い、データの再現性について検討を行った。 一方、糸球体高血圧モデルである伸展刺激を受けたGEN-T細胞が何らかの液性因子を放出して、遠隔臓器の内皮機能を傷害する可能性の検討については、最近の研究の動向から、GEN-T細胞由来のエクソソームが関与する可能性が浮上してきたため、エクソソーム解析を行う予定で準備を進めた。これは、伸展刺激を受けたGEN-T細胞と刺激を受けていない同細胞の上清からエクソソーム画分を精製し、ここに含まれるRNAを網羅的に比較解析するものである。エクソソーム解析は次世代シークエンサーを使用して行う予定であるため、現在、別プロジェクトのサンプルを用いて次世代シークエンサーの手法についてデータ解析法も含めて習熟を図った。 一方、岩手医科大学より分譲を受けたGEN-T細胞が生育しなくなったため、作成元の東京女子医科大学腎臓内科に分譲を依頼したが、これまでのところ分譲を受けるに至っていない。そこで、in vivoの腎硬化症モデルとして、飲水中にL-NAMEを投与したSHRラットの腎を用いて、上記遺伝子群の発現を検討した。その結果、Wnt シグナルに関わると想定されるSFRP2遺伝子の発現が、腎硬化症と関連して大きく減少することが分かった。現在、この系について解析を進めている。
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