研究実績の概要 |
微量の組織からペプチドを高効率に抽出する方法を確立した。この方法を用いてマウスの全脳 1mgから約400種類のタンパク質に由来する3,500種類を超えるペプチドを同定した。これらのペプチドの中には約20種類の既知のペプチドが存在していた。また、400種類中の90種類のタンパク質がヒト血漿のペプチド分析においても観測されたタンパク質であった。さらに、この中の9種類は脳組織において特異的に発現している可能性の高いタンパク質であった。 LC-MS測定技術について、高感度で比較分析する方法(DIA法:Data Independent Analysis法)を確立し、髄液中のタンパク質の定量分析法を確立した。この方法をてんかん誘発マウスに応用した結果、159種類のタンパク質に由来する338種類のペプチドの有意な変動を検出した。また、159種類の中の64種類は、当研究グループで独自に開発した血漿ペプチド分析技術によって検出されているタンパク質であった。 グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)に蛍光標識してnative PAGEで分離し、ゲル上で蛍光標識GIPが存在している部分を切り出してGIPに結合する血漿タンパク質をLC-MS/MS法で解析した。その結果、アルブミン, IgG、トランスフェリンの3種類の蛋白質がGIPに結合している可能性を示した。さらに、このことを3種類のタンパク質単体とGIPを混合した試料に対するウエスターンブロッティングで解析し、それぞれがGIPと複合体を組むことを示した(Hoshiyama A, et al. Endocrine J. 66:621-628, 2019.)。
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