対象は、30歳以上、50歳未満の非糖尿病(空腹時血糖値(FBS)126mg/dl未満)の男性とし、インスリン抵抗性の程度が広範囲に分布するように、BMIが21~22.99kg/m2かつリスクファクター(RF)を有さない(G1; n=24)、BMIが23~24.99kg/m2でRF 0個 (G2; n=28)、RF 1個(G3; n=28)、RF 2個以上(G4; n=14)、また比較対象群として、メタボリックシンドロームに該当する肥満者(BMI; 25~27.5kg/m2) (肥満MS群)(G5; n=20)の計114名を対象とした。これらの被験者に対して2ステップ正常血糖クランプを行い、骨格筋と肝臓のインスリン抵抗性を評価した。被験者の血清サンプルについて網羅的に脂質成分や代謝産物の解析を行い、肝臓、骨格筋インスリン抵抗性との関連性を調査した。得られた血清と骨格筋サンプルについてリピドーム解析を中心とした分析を行った。インスリン感受性と正に相関する脂質は5種、負に相関する脂質は10種程度明らかとなった。また、他の代謝産物についても10種が正相関し、1種が負に相関するものが明らかとなった。その一方で肝インスリン感受性と相関する代謝産物はほとんど認められなかった。骨格筋サンプルについてもshotgun lipidomicsデータの解析を行い、特徴的な複数の脂質群がインスリン感受性と相関することが明らかとなり、それらの多くは正相関する傾向を認めた。しかしながら、これらは横断研究であるため、運動前後、高脂肪食前後のサンプルの解析結果とも照合している。また、候補代謝産物についても、その産生経路の推定を進めている。
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