研究課題/領域番号 |
17K19936
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
高倉 久志 同志社大学, スポーツ健康科学部, 助教 (20631914)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | 高脂肪食 / 持久的トレーニング / ミトコンドリア / 骨格筋 / 肥満 / 炎症性サイトカイン / 脂肪重量 / 活性酸素 |
研究実績の概要 |
本研究計画においては、持久的競技パフォーマンスに深く関わるミトコンドリアが高脂肪食や持久的トレーニングに対してどのような影響を受けるのか、また肥満状態において抗酸化物質を投与しながらの持久的トレーニングがミトコンドリア生合成の促進を助長するのか否かを検討する。本年度は8週間の高脂肪食摂食期間を設けることによって食餌性肥満動物モデルを作成し、そこからの9週間の持久的トレーニング(TR)と抗酸化物質投与の組み合わせが体重や脂肪量、筋組織内におけるミトコンドリア生合成に及ぼす影響を検討した。被験動物にはWistar系雄性ラットを用いた。高脂肪食摂食期間終了後に、高脂肪食+メラトニン非投与+対照群をHNS、高脂肪食+メラトニン投与+対照群をHMS、高脂肪食+メラトニン非投与+ TR群をHNT、高脂肪食+メラトニン投与+TR群をHMTとし、ランダムに被験動物を振り分けた。TRプロトコルはトレッドミルを傾度5°に設定し、走行時間は最大80分、走行速度は最大25 m/minとした。TR最終日から48時間後に解剖を行い、体重および脂肪量(精巣上体脂肪)、腓腹筋深層部位のミトコンドリアタンパク質発現量の測定を行った。体重および脂肪組織重量は抗酸化物質投与とTRの組み合わせにより、有意な減少、もしくは減少傾向が認められた。その一方で、ミトコンドリアタンパク質発現量は、どの群間にも有意差が認められず、更にメラトニン投与を実施する群においては低値傾向を示した。今後は、TRによってミトコンドリア発現量が増加しなかったメカニズムを炎症性サイトカインや活性酸素との関連性を踏まえて、更なる検討が必要であると言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、8週間の高脂肪食摂食期間を設けることによって食餌性肥満動物モデルを作成し、そこからの9週間の持久的トレーニング(TR)と抗酸化物質投与の組み合わせが体重や脂肪量、筋組織内におけるミトコンドリア生合成に及ぼす影響を検討した。体重および脂肪組織重量は抗酸化物質投与とTRの組み合わせにより、有意な減少、もしくは減少傾向が認められたが、ミトコンドリアタンパク質発現量にはTRによる影響は認められず、むしろメラトニン投与によって低値傾向を示した。本年度においては、肥満動物モデルの作成、およびその動物モデルに対する抗酸化物質投与とTRの組み合わせが身体特性やミトコンドリア量に及ぼす影響を検討することが主な目的であったことを鑑みると、おおよそ当初の計画通りに実験が実施できた。したがって、達成度はおおむね順調に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、肥満動物モデルに対する運動トレーニングと抗酸化物質投与の組み合わせによって生じた適応のメカニズムの解明に取り組む予定である。持久的トレーニングによってミトコンドリアタンパク質発現量が増加しなかったのは、肥満状態においてはミトコンドリア生合成が促進されにくい体内環境であることを示唆しているのかもしれず、炎症性サイトカインとの関連に着目して検討を行う。また、メラトニン投与によってミトコンドリアタンパク質が低下した理由は、抗酸化物質であるメラトニン投与によってPGC-1α発現増加に関わる活性酸素が除去されている可能性も考えられた。したがって、本年度得られた実験結果と炎症性サイトカインや活性酸素によって活性化される分子経路との関連性について着目し、検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に実施したトレーニング実験では、用いた被検動物数を当初の計画より減らしたことや、トレーニング群の被験動物の数匹がトレーニングを完遂できず脱落し解析に至らなかったことから、次年度使用額が生じた。次年度使用額については、今後の実験において必要な高脂肪食飼料や被験動物、および薬品などの実験消耗品の購入に用いる計画をしている。
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