研究課題/領域番号 |
17K19936
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
高倉 久志 同志社大学, スポーツ健康科学部, 助教 (20631914)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2021-03-31
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キーワード | 高脂肪食 / 持久的トレーニング / ミトコンドリア / 骨格筋 / 肥満 / 炎症性サイトカイン / 抗酸化機能 / 活性酸素 |
研究実績の概要 |
昨年度までの研究成果において、体重および脂肪組織重量は抗酸化物質投与とTRの組み合わせにより、有意な減少、もしくは減少傾向が認められた。その一方で、ミトコンドリアタンパク質発現量は、どの群間にも有意差が認められず、更にメラトニン投与を実施する群においては低値傾向を示した。また、メラトニン投与によってミトコンドリアタンパク質が低下した理由として、抗酸化物質であるメラトニン投与によってミトコンドリア生合成の鍵因子であるPGC-1α発現増加に関与する活性酸素が除去されている可能性も考えられた。そこで本年度においては、健常ラットに対して抗酸化物質であるメラトニンの投与が一過性運動によるミトコンドリア生合成や内因性の抗酸化酵素に関わるmRNA発現の変化に及ぼす影響を検討した。 被験動物にはWistar系雄性ラットを用いた。トレッドミルを斜度5°に固定し、40分間の持久的運動を実施した。運動群においては運動負荷を漸増負荷形式とし、15 m/minを10分、20 m/minを10分、23 m/minを10分、25 m/minを10分で実施した。なお、メラトニンを投与する場合には、運動開始1時間前にメラトニンを5 mg/kgの濃度で腹腔に投与した。結果として、PGC-1α mRNA発現量はメラトニン投与の有無にかかわらず、運動によって増加した。一方で、抗酸化遺伝子であるhmox mRNA発現量はメラトニンの投与によって運動による増加が抑制される傾向が認められた。このことから、外的な抗酸化物質の投与によって抗酸化力が増加し、酸化ストレスが軽減される可能性が示唆された。ミトコンドリア生合成の応答と抗酸化に関連する遺伝子の応答の差異が生じた背景や、適応から想定される応答が実際の応答とは異なった原因についてはより詳細な検討が必要であろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度においては、健常ラットに対してメラトニンの投与が一過性運動によるミトコンドリア生合成や内因性の抗酸化酵素に関わるmRNA発現の変化に及ぼす影響を検討した。当初の計画では一過性運動による応答の検証に加えて、トレーニング後の骨格筋や血液などを用いて適応メカニズムを検証する予定だったが、一過性運動による影響を検証するまでで留まってしまった。それらを踏まえて、現在までの達成度はやや遅れているとした。
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今後の研究の推進方策 |
今後は一過性運動による応答の検証を引き続き進めながら、肥満動物モデルおよび健常ラットに対する運動トレーニングと抗酸化物質投与の組み合わせによって生じた適応のメカニズムの解明にも取り組む予定である。また、これまで得られている体重や脂肪量、ミトコンドリア量のデータに関する結果の妥当性を担保するために、追加でトレーニング実験を行う計画をしている。同時に、これまでに得られている適応をもたらす原因の1つにmicroRNAが関与している可能性も想定しているので、その観点からも検証を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
トレーニング実験において、トレーニング群に割り振った被験動物の数匹がトレーニングを完遂できず脱落し、解析に至らなかったことから、更なる追加実験の必要性が生じ、次年度使用額が生じた。次年度使用額については、今後の実験において必要な高脂肪食飼料や被験動物、および薬品などの実験消耗品の購入に用いる計画をしている。
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