研究実績の概要 |
本研究計画においては、持久的競技パフォーマンスに深く関わるミトコンドリアが抗酸化物質や持久的トレーニングに対してどのような影響を受けるのかを明らかにするために、抗酸化物質を投与しながらの持久的トレーニングがミトコンドリア生合成の促進を助長するのか否かを検討する。本年度は健常ラットに対して抗酸化物質を投与しながらの持久的トレーニングがミトコンドリア生合成に及ぼす影響を検討した。被験動物にはWistar系雄性ラットを用いた。1週間の順化期間を設けた後に、通常食+メラトニン非投与+対照群をNNS、通常食+メラトニン非投与+トレーニング(TR)群をNNT、通常食+メラトニン投与+TR群をNMTとし、ランダムに被験動物を振り分けた。運動トレーニングプロトコルは9週間のトレッドミルエクササイズとした(時間: ~80 min, 速度: ~25 m/min, 斜度: 5°)。トレーニング最終日から48時間後に解剖を行い、腓腹筋深層部位のミトコンドリアタンパク質発現量(COXIV)をウェスタンブロティング法によって検出した。ミトコンドリアタンパク質発現量を群間で比較したところ、NNS群に対してNNT群とNMT群で有意な発現量の増加が認められた。その一方で、NNT群とNMT群の間には有意な差は認められなかった。持久的トレーニングによってミトコンドリア生合成は促進されたものの、メラトニン投与による付加的な効果は認められなかった。肥満動物の場合とは異なり、健常ラットにおいてはメラトニン投与によって持久的トレーニングの効果が抑制されるような現象は認められなかったものの、予想したようなミトコンドリア生合成の促進も生じなかった。このメカニズムについては今後詳細に検討する必要があると考えられる。
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