本年度は、【課題2】胸腺退縮が免疫応答に及ぼす影響の評価、ならびに【課題3】mTORC1シグナルを標的とした免疫老化回復の試み、に取り組んだ。 【課題2】に関しては、徳島大学・高濱教授が開発したドキシサイクリン依存性に胸腺上皮細胞特異的にCreを発現するマウス(β5trt-TAtetO-Cre)とRaptorコンディショナルノックアウトマウスの交配によって樹立した、胸腺上皮細胞でのみmTORC1シグナルを欠失可能なマウス(Raptorfl/flβ5trt-TAtetO-Cre)を用いて解析を行った。母体を経由して、発生の初期段階からドキシサイクリンを投与したRaptorfl/flβ5trt-TAtetO-Creマウスにおいて、mTECによって分化が制御されるTregの割合の若干の低下が認められると共に、エフェクターと考えられる細胞の割合の増加が観察された。しかし、調べた範囲の免疫応答において、ドキシサイクリン非投与マウス由来と比べて大きな差異は認められず、また期待された自己免疫疾患様の兆候も確認されなかった。 一方、【課題3】に関しては、同じくβ5trt-TAtetO-Creマウスと、mTORC1シグナルの負の調節因子であるTsc1のコンディショナルノックアウトマウスを交配することで、ドキシサイクリン依存性に、胸腺上皮細胞でmTORC1シグナルを活性化可能なマウス(Tsc1fl/flβ5trt-TAtetO-Cre)を樹立して解析に用いた。当該マウスが6ヶ月齢の段階でドキシサイクリンを投与した群と、非投与群とに分け、7ヶ月齢の時点で胸腺サイズ、ならびに胸腺上皮細胞に占めるmTECとcTECの割合の変化の有無を評価したが、両者の間に有意な差異は認められなかった。
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