研究課題/領域番号 |
17K19938
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研究機関 | 帝塚山学院大学 |
研究代表者 |
向井 貴子 帝塚山学院大学, 人間科学部, 助手 (60701464)
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研究分担者 |
楠堂 達也 帝塚山学院大学, 人間科学部, 准教授 (00460535)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | FABP1 / 脂肪酸結合タンパク質 / NASH / NAFLD / 脂肪肝 / 脂肪肝改善 |
研究実績の概要 |
平成30年度は実施計画に従い、(1)FABP1抑制法の検討と(2)NASHモデルマウスを用いたFABP1抑制効果の評価を行い、以下の結果を得た。(1)FABP1抑制法の検討:平成29年度の結果より、Jet-PEIを用いた抑制法は持続時間に問題が見られたため、アデノ随伴ウイルス(AAV)を用いたFABP1抑制系の構築を行った。FABP1のshRNAを発現するAAV(AAV-shFABP1)を作製し、293T細胞にて大量調整し、動物投与レベルに精製した。精製したAAV-shFABP1をマウスの尾静脈より投与し、2週間後に各組織を摘出し解析したところ、肝臓においてFABP1の有意な発現低下が認められた。このFABP1の発現抑制は投与4週間後においても認められた。AAVは免疫応答を誘導しないことからも、AAVによるFABP1抑制は本研究を遂行する上で理想的あると考えられた。(2)NASHモデルマウスを用いたFABP1抑制効果の評価:高脂肪・高コレステロール食を9ヶ月間摂食させNASHを誘発させたマウスにAAV-shFABP1を投与し、高脂肪・高コレステロール食にて、さらに1ヶ月間飼育後に各組織を摘出し解析したところ、FABP1の発現はコントロールと比較して約35%減少していた。しかしながら、予想に反して、AAV-shFABP1投与群において肝炎症マーカー、線維化マーカーの発現上昇が認められ、FABP1の抑制がNASH病態に対して増悪化に働く可能性が示された。なお、本実験のFABP1抑制期間は1ヶ月間である為、より長期間(3ヶ月間)のFABP1抑制効果を現在検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題を遂行する上で、研究に適したNASHモデルマウスの作製とFABP1抑制方法の確立は必須である。平成29年度の結果から、高脂肪・高コレステロール食の長期摂食による食事誘導性NASHモデルマウスが本研究を遂行する上で適したモデルであることが示された。一方、FABP1抑制法に関して、平成29年度はJet-PEIを用いた実験系を検討したが、持続時間が問題となっていた。そこで、平成30年度は、FABP1抑制法に関して、アデノ随伴ウイルス(AAV)を用いた実験系を検討し、AAVによるFABP1抑制系を確立した。以上の2つが確立されたことで、本研究の目的である、脂肪酸結合タンパク質の非アルコール性脂肪肝炎NASH改善の可能性を評価する準備が整った。上記の実験系を用いて、平成30年度には、NASH病態に対するFABP1抑制効果の検証を行い、一部結果を得た。なお、本実験は継続中である。以上のことから、研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
令和元年度は最終年度であることから、NASHに対するFABP1抑制効果についての更なる検討と総括を行う。(1)NASHに対するFABP1の長期的な抑制効果:平成30年度に実施したNASHモデルマウスに対するFABP1抑制実験では、予想に反して、FABP1の抑制がNASH病態に対して増悪化に働く可能性が示された。しかしながら、本実験の実施期間は1ヶ月間である。そこで、より長期間(3ヶ月間)のFABP1抑制効果を検討する。(2)NASH病態発症過程における効果の検討:高脂肪・高コレステロール食の摂食において、脂肪肝は1ヶ月目で誘発されるが、肝障害が認められるのは3ヶ月目以降である。従って、NAFLDからNASHへの進行は2ヶ月目以降、徐々に進行していくと考えられる。そこで、摂食2ヶ月後にAAV-shFABP1を投与し、NASHを発症する6ヶ月目まで飼育することで、NASH病態発症におけるFABP1抑制効果を検討する。以上の実験結果を総合的に解析し、FABP1抑制によるNASH病態、およびNASH病態発症の予防効果、並びに改善効果を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
NASHモデルマウスの作製、及びウイルス投与後の経過観察には長期間を要する。年度を超えて動物実験を実施しているためサンプル解析のための費用を繰り越した。
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