平成30年度にNASHに対するFABP1の1ヶ月抑制効果を検討した。結果は予想に反し、FABP1抑制がNASH病態に対して増悪化に働く可能性が示された。そこで、最終年度は、(1) NASHに対するFABP1の長期的抑制効果を検討した。NASHを発症させたマウスに対して、FABP1を3ヶ月間抑制したところ、1ヶ月抑制で散見された炎症の増悪化傾向は改善された。また、耐糖能はコントロールに比べて有意に改善された。次に、(2)NASH病態発症過程におけるFABP1抑制効果を検討した。NAFLDからNASHへの進行は、高脂肪・高コレステロール(HFHC)食の摂食2ヶ月以降から徐々に進行していくことから、摂食2ヶ月後にFABP1を抑制し、NASHを発症する6ヶ月目まで飼育し評価した。結果は、個体間の症状にばらつきが大きく、各パラメーターに有意差は認められなかった。 本研究は、FABP1抑制によるNASH改善の可能性を評価し、画期的なNASH治療法の開発に挑戦することを目的とした。本研究を遂行するにあたっては、最適なNASHモデルマウスの選定と優れたFABP1抑制法の確立が必要不可欠である。平成30年度までの研究により、HFHC食の長期投与が生活習慣病に起因するヒトに近いNASH病態発症過程を経ることを確認し、本研究のためのNASHモデルマウスとして選定した。また、FABP1抑制法については、持続性、免疫応答性の観点からアデノ随伴ウイルスベクターを用いた実験系を確立した。これらの実験系を用い、FABP1抑制によるNASH改善の可能性を評価した。研究期間内に、FABP1抑制が革新的なNASH治療法になることを示すには至らなかったが、FABP1抑制はNASHの関連要因の1つである、耐糖能異常を改善することから、FABP1抑制の有効性を示した。
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