研究課題
本研究の目的は、手に持って扱う道具について、いわゆる熟練者が行う「無意識の所作」を「見える化」する方法を確立し、その解析方法を探ることである。そして、そのモデルとして大勢の利用者を確保できる包丁操作を選択し、データの取得と解析を行なってきた。しかし、これまで、この「見える化」は視覚的に表現をしてきたが、この解釈は傾向として確認できるものの、「見える化」というには不足していた。これまでの表現では、同値の記録はそのまま一つの点として表現したため、運動全体の俯瞰はできていたが、時間的な変化を十分に考慮することはできていなかった。今年度は、これを考慮した上で表現できる方法について検討を行なってきた。新しく開発した手法では、同値の記録の個数を数え、その個数を色の濃淡として表現し、平面プロットすることで、反復的な運動についてより明確に表現できるようになった。この「見える化」手法では、突発的な変化については淡く表現され、ほとんど見えなくなるため、より個性が強調されるようになる。この表現を、既得のデータに適用したところ、熟練者と学習者の違い(特徴)をより明確に捉えることができるようになり、従来方式に比べ、客観的な表現が可能となった。また、これにより、個々のデータの特徴も明確に表現できるようになった。ただし、この方法については空間解像度を犠牲にして実行しており、また経時的な表現とは言いがたい。これを踏まえ、アニメーション化も検討してはいるが、瞬間的な変化は捉えられるものの、効果的な表現には至っておらず、検討を継続していく必要がある。なお、今年度は当初の目的通り、これまで得られた調査・解析手法を用いて、さまざまな手道具について調査を行う予定であったが、新型感染症の拡大を受け、被験者を募ることができず実施を断念した。
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バイオメカニズム学会誌
巻: 44 ページ: 229-235