研究課題/領域番号 |
17K19944
|
研究機関 | 国立保健医療科学院 |
研究代表者 |
志村 勉 国立保健医療科学院, その他部局等, 上席主任研究官 (40463799)
|
研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
|
キーワード | 放射線発がん / がんの微小環境 / 酸化ストレス / ミトコンドリア / がん関連線維芽細胞 |
研究実績の概要 |
東日本大震災における福島原子力発電所事故後の低線量放射線被ばくによる不安対策として、放射線の晩発影響である発がんの機構解明が求められている。発がんにおいては、がん細胞とその周辺部の結合組織(主に線維芽細胞)の相互作用(がんの微小環境)が重要な役割を果たしていると考えられている。がん組織の線維芽細胞は、がん関連線維芽細胞(Cancer Associated Fibroblasts: CAF)と呼ばれ、がん細胞の増殖や浸潤に関わることが報告されている。しかし、これまでの解析では、放射線発がんにおけるがん微小環境の役割について、十分に解析は実施されていなかった。我々は、ヒトの正常線維芽細胞を用いて、長期放射線照射により、ミトコンドリアのエネルギー産生が増加し、その副産物として発生する活性酸素の酸化ストレスがCAFの誘導に関与することを明らかにした。さらに、我々は、マウスを用いた動物実験により、がん細胞のみ、がん細胞+非照射繊維芽細胞を混合して作成した腫瘍と比較し、がん細胞と放射線誘発CAFを混合して作成した腫瘍では、がんの増殖能が亢進することを明らかにした。以上の成果をまとめた論文を投稿し、アメリカ癌学会の学会誌Molecular cancer research に掲載された(2018; 16(11), 1676-1686)。本研究の成果により、放射線発がんにおいて観察される変化を捉え、放射線発がんリスク評価の根拠となる科学的知見の蓄積が期待される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、がんの微小環境の変化が放射線発がんに関与するかどうかを放射線誘発がん関連線維芽細胞の形成と発がんへの影響を検討し、ミトコンドリア酸化ストレスがCAFの形成を介して放射線発がんに関与することを明らかにした。研究は、計画通りに順調に進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究で得られた成果を英語論文としてまとめ、現在国際誌に投稿中である。審査結果によっては、追加実験や投稿先の変更が必要であることから、研究期間の1年間延長する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本研究は計画通りに進み、研究成果を英語論文としてまとめた。論文はの掲載が決定するまで、次年度まで研究期間を延長する。
|