アルコール・薬物依存では、一度断酒・断薬に成功しても、再飲酒・再摂取の欲求に負けて再発してしまうケースも少なくない。このため、その治療においては、アルコール・薬物に対する「渇望感」をコントロールすることが、最も重要な課題の一つである。本研究は、人間の可聴域上限を超え耳に聞こえない超高周波成分を豊富に含む音響情報が、報酬系神経回路を活性化する効果(ハイパーソニック・エフェクト)を応用し、アルコール・薬物に対する「渇望感」を軽減し、アルコール・薬物依存の再発を予防する新規代替・置換療法の開発することを目的とした。 具体的には、アルコール・薬物依存の診断で、国立病院機構久里浜医療センターにおいて、入院治療を受けている患者に対して、認知行動療法実施中に、人の可聴域上限をこえる超高周波成分を豊富に含む音響を呈示することで、アルコール・薬物に対する「渇望感」の軽減効果、再発予防効果を検証する臨床試験をおこなった。 依存症の音響療法に最適化した、音響コンテンツや呈示方法(デバイス、機会、音量、呈示時間など)について、本研究の目的のために最適な方法の探索的検討を行った。音響の呈示機会としても、作業療法、認知行動療法中を中心に、探索的に予備試験を行った。これまでの健常人を対象とした一連の実験室実験や、うつ病患者、認知症患者を対象とした実験などで使用してきた方法をベースに、本研究の目的のために最適な方法の探索的検討を行った結果、音響コンテンツや呈示方法(デバイス、機会、音量、呈示時間など)についての最適化は完了した。この成果に基づいて、国立病院機構久里浜医療センターにおいて、入院治療を受けている患者43例に対して、集団認知行動療法中に音響を提示する臨床試験を行った。
|