研究実績の概要 |
糖尿病合併症としての認知症は、糖尿病の予後を悪化させる大きな原因となっている。このため、認知機能の低下をいかに早期に発見して治療を開始するかが、重要な課題である。本研究では、プロテオミクス及びグライコミクスを用いて、糖尿病による認知機能の低下を初期の段階で発見する診断指標を開発する。さらに、認知症の合併に伴って変化するタンパク質や糖鎖及び糖タンパク質の発症機序への関与を分子レベルで明らかにし、認知症合併を予防する予防戦略の開発につなげることを目的とする。 本年度は、70代の大規模長期縦断コホート(SONIC)コホート中から、解析対象者を抽出した。SONIC調査は、初回調査(1 wave)、3年後に追跡調査(2 wave)、6年後に追跡調査(3 wave)が行われている。そこで、1 wave参加者1,000人の中から、2 waveと3 waveにも参加し、糖尿病マーカー(HbA1c)と認知機能検査 (MoCA-J)のデータを取得しているグループを抽出した(約500人)。そしてその中から、1, 2, 3 waveともに糖尿病及び糖尿病予備軍と考えられ(HbA1c (NGSP) 6.5%以上)、かつMoCA-Jのスコアが3年後、6年後と連続して低下した認知機能低下群 (1 wave > 2 wave > 3 wave) を解析対象とした。さらに、対照群として1, 2, 3 waveともに糖尿病及び糖尿病予備軍と考えられるが(HbA1c (NGSP) 6.5%以上)、MoCA-Jのスコアは1, 2, 3 waveともにカットオフ値以上で認知機能の低下が認められない群(コントロール1)、1, 2, 3 waveともに正常 (HbA1c (NGSP) < 6.5%) で認知機能の低下も認められない群(コントロール 2)を、教育歴、性別を考慮して抽出した。
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