研究課題/領域番号 |
17K19951
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研究機関 | 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター |
研究代表者 |
田口 明子 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 統合加齢神経科学研究部, 部長 (80517186)
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研究分担者 |
田之頭 大輔 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 統合加齢神経科学研究部, 研究員 (80724575)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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キーワード | 化合物探索 / インスリン受容体基質 / 認知機能 / 糖尿病 / 認知症 / ドラッグリポジショニング |
研究実績の概要 |
1.中年期の生理的2型糖尿病モデルマウスが認知機能の低下を呈する際に、海馬の神経細胞新生の減少と共に海馬Insulin Receptor Substrate 1(IRS1)の特定Serine残基のリン酸化の増加が伴う事を見出した。 2.有機化合物ビグアナイド系薬剤に分類される糖尿病治療薬の1つメトフォルミンの慢性投与は、中年期の生理的2型糖尿病モデルマウスの認知機能および海馬の神経細胞新生の衰退を有意に回復させる事を明らかにした。 3.その際、海馬IRS1の前述のSerine残基のさらなるリン酸化の増加に加え、メトフォルミン刺激特異的な2箇所のSerine残基のリン酸化の上昇とメトフォルミンの標的分子として知られるAMPKとaPKCλのThreonine残基の有意なリン酸化増加が連動する事を突き止めた。 4.しかしながら、この時、血糖値の増加の改善は見られなかったことから、メトフォルミンによる海馬機能の改善は、血糖値作用効果とは独立して誘導されている事が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脳のIRS1以外の同メンバーに関与する化合物の探索を行う予定であったが、研究の流れから、これより先に、糖尿病に伴う認知機能および神経細胞新生の低下に脳IRS1の特定Serine残基のリン酸化が関与することを見出し、さらに、本研究課題内容と重複し同時に進めていたドラッグリポジショニングの実験から、有機化合物ビグアナイド系糖尿病薬メトフォルミンによる脳IRS1の3つのSerine残基のリン酸化の活性が同薬剤による認知機能の改善に連動することを突き止め、論文も発表できたことから、当初の計画通りでは無いが、本課題の内容に関する研究としては、おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
1.当初の計画通り、外部研究機関との共同研究により、タンパク質の構造・機能、相互作用解析、データーベース解析を含むバイオインフォマティクスおよび計算生物学研究を用いて、IRS1以外の同メンバーをターゲットとしたヒット化合物の探索研究を行う。 2.探索研究に続き、候補化合物が脳IRSsシグナルおよび認知機能へ与える影響について、糖尿病付随あるいは単独の認知機能障害モデルを用いて、申請者が構築したマウスの解析系および追加解析によって精査する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由:本研究課題に関連した研究の流れから、IRS1以外の同メンバーでは無く、IRS1について研究の進展があり、本年度はこちらの研究を優先させたため、当初の計画だった外部研究機関との共同研究によるIRS1以外の同メンバーに関連する化合物の探索を実施できなかったため。 使用計画:当初の計画通り、外部研究機関との共同研究により、IRS1以外の同メンバーをターゲットとしたヒット化合物の探索研究の費用に当てる予定である。
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