研究実績の概要 |
照明器具と汎用カメラによる高速可視光通信手法の研究を行った。従来手法と異なり、光源やシャッターの種類に制約がなく、1光源当たりフレームレートの数倍~十倍以上のビットレート実現を目指した。さらに、理論的な解析による実験結果の検証と可視光通信の新た応用について示した。具体的な研究成果は以下の通りまとめられる。 1.空間分割多重変調による高速通信:複数の点光源を含むLED array送信機と多数の撮像素子からなる単一のカメラを受信機として用い、各送受信素子間での空間分割多重化による可視光通信を実現した。各光源の信号が干渉しカメラの各受光素子で重畳して受信される状況で逆畳み込み(deconvolution)等によりそれらを分離、抽出し受信信号のSN比を理論限界まで近づける技術を確立した。MPU制御による8x8LEDアレー照明の設計を用いた実験では、60fpsの汎用グローバルシャッターカメラで5.76 kbpsの通信性能を実現した。 2.OFDMによる高速可視光通信:OFDM(直交周波数分割多重化)変調光と汎用ローリングシャッターカメラを用いた単一LED光源による高速可視光通信を提案、実装した。評価実験の結果、60 fps, ラインセンサ数524本のカメラを用い、24 kbps以下で誤差10%以下の通信性能を実現した。さらに、送受信系の数理解析モデルに基づき、実験結果と理論との整合性を検証した。 3.選択的可視光通信:カメラが光源に対するフィルタとして機能することを数理的にモデル化することで、カメラパラメータの変更による選択的な可視光通信が可能であることを理論的に示した。さらに、複数キャリアからなるOFDM変調光に対し、シャッター開度を変えることで受光可能なキャリアが変わること、それによりTVやラジオのような情報通信が可視光通信でも可能であることを実証した。
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