研究課題/領域番号 |
17K19954
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
徳山 豪 東北大学, 情報科学研究科, 教授 (40312631)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | 計算理論 / 代数幾何学 / 群の表現論 / 計算複雑度 |
研究実績の概要 |
数学と計算理論の融合に向けて、特に数学の群論及び表現論における最先端研究者及び学生への啓蒙を行うために、計算理論における数学の利用についての講演を表現論シンポジウムにおいて研究代表者の徳山が行った(2017年11月28日)。連携研究者の有木、西山も参加し、40人ほどの若手研究者への啓蒙と討論を実施した。 また、研究の大きなテーマであるGeometric Complexity Theoryにおいて、現在世界で最も活発に研究を行っているドイツMax Plank 情報科学研究所のChristian Ikenmeyer 博士を2018年3月3日-10日の旅程で招聘し、東京で2回の講演会と、仙台での3日間のワークショップを開催し、研究分野の現状についての検討を行うとともに、連携研究者を含めて共同研究を実施するための議論を行った。 理論的な研究であり、成果発表には時間がかかるため、初年度の論文の発表は1編である。格式ある国際論文誌Algorithmicaに発表したEfficiently Correcting Matrix Productは、スウェーデン、イギリス、デンマークの研究者との国際共同研究であり、本研究でテーマとしている高速な行列積計算において、計算結果の検算を計算理論のランダム検証技術を用いて効率的に行う理論成果であり、高く評価されている。 さらに定期的なセミナーにおける打ち合わせ及び共同研究を連携研究者たちと行っており、また、物理モデルである格子水モデルに関する初期的な成果として、圧縮データ構造である二部決定ダイアグラムを利用した高速なエントロピー計算のシステムを構築している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の目的であった世界的動向の情報収集と啓蒙に関して、予定通りの進捗を行うことができた。経費の使用が決定後であり、国際的な情報収集は年度末に近い時期になったが、Christian Ikenmeyer 博士(MPII)の招聘と、その機会に行ったワークショップにおいて、世界における最新の動向を知ることができ、また研究代表者及び連携研究者の研究テーマとの関連を見出すことができた。 特に、群論における箙構造に関する構造とGeometric Complexity Theoryとの類似を見出すことができ、今後の発展に期待を持つことができた。 また、数学の若手研究者の啓蒙に関して表現論シンポジウムで行った講演は、本分野の研究の日本での初めての導入とみなすことができ、大きな成功であったと考えられる。理論的研究であり、研究の成果の発表には時間がかかると考えられ、初年度の論文発表は成果の項に記した一編であるが、非常に格式の高い論文誌での発表であり、当初の予定に対して順調に発展していると考えることができる
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今後の研究の推進方策 |
Geometric Complexity Theoryに関しては、連携研究者との東京大学におけるセミナーを継続的に行い、代数的組み合わせ論,表現論、代数幾何学の手法を計算理論に取り入れる取り組みを行うとともに、若手研究者や学生への啓蒙活動を継続する。また、海外研究者との連携を図り、6月に開催される計算幾何学国際会議(ブダペスト)での情報収集や、ドイツ マックスプランク情報研究所のIkenmeyer博士との交流継続を行い、オーストリア、オーストラリア、米国、オランダ、ドイツの研究者との共同研究や相互訪問による研究推進を考えている。また、経費の余裕があれば、米国カルフォルニア大学バークレー校のサイモンズインスティチュート計算理論研究所におけるLower bounds in Compuptational Complexityプロジェクトのセミナーに連携研究者とともに参加する(12月)ことを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究費の決定が予定より遅かったため、予定していた海外出張などを別経費を用いて行った。そのため、経費に余剰が出た。 連携研究員を含めて、カルフォルニア大学で開催される研究集会に参加するなど、来年度以降の国際交流での経費に有効的に用いる予定である。
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