研究課題/領域番号 |
17K19954
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
徳山 豪 関西学院大学, 理工学部, 教授 (40312631)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2021-03-31
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キーワード | 計算理論 / 代数幾何学 / 表現論 / 計算幾何学 / 計算階層 |
研究実績の概要 |
本研究に関する代数幾何学や表現論を中心とした数学と、理論計算機科学を中心にした情報科学の研究者による研究会(GCTセミナー)を継続し、さらに、Geometric Complexity Theoryの世界的な権威であるChristian Ikenmeyer博士と、博士学生であるNick Fisher氏を8月20日から28日の期間招へいし、東京大学、京都大学、関西学院大学においてセミナーを開催し、共同研究を実施した。この招へいの費用は、本研究費から拠出した。また、研究代表者の徳山は、韓国で行われた国際ワークショップAAAC2019およびWAAC2019に参加して、研究成果を発表し、その旅費も本研究費から拠出した。 具体的な成果として、行列式の一般化に関する新しい成果を与えた。λ行列式へのワイルの指標公式の、行列式表現による一般化公式を得た。 これは、1988年に徳山によって与えられたデフォーメーション公式の新しい表現法であり、非常に美しい公式である。 また、それに付随して、Dodgesonによって与えられた行列式アルゴリズムの完備化を与え、また、その高速化を目指す新たな方向性を与えることに成功した。 これらの成果は、上述の国際ワークショップWAAC2019でその一部を発表し、また、国内のいくつかの研究会で招待講演を行った。本成果についての論文の作成も行い、国際会議に投稿を予定したが、コロナ肺炎の蔓延によって本年度の投稿は断念し、来年度の国際会議での発表および国際学会誌での発表を目指すこととした。 また、学生による計算機実験を実施し、手法の有効性に関して予備的な成果を与えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述のように、ドイツ、イギリスなどの研究者を交えて国際的な共同研究を行い、数学と計算理論の協働による計算機科学の重要課題に対する挑戦の体制を構築しつつあり、萌芽研究としてふさわしい成果を上げている。本テーマは数学における表現論や代数幾何の先端理論と、理論計算機科学の最先端理論の融合という非常に難しい課題ではあるが、核となるテーマである行列式の一般化の計算論に関する新しい成果を上げることもでき、また、平面上の点集合の距離埋め込みについての成果もあげた。また、数学分野及び情報科学分野の共同研究者たちもそれぞれいくつかの成果を上げており、予想以上に進展している。本年度は数学分野の若手研究者たちの啓蒙のための講演も行い、さらに、研究会の主催や研究発表なども順調に行い、萌芽から発展する新たな展開にも挑んでいる。 ただし、最終年度ではあったが、論文発表を行う予定であったEuroCGがコロナ肺炎のために現地開催できない事情になり、論文を取り下げたため、経費執行に関してさらに一年の延長をせざるを得ない状況になった。また、本研究によって芽生えた萌芽を進展させる目的で、CRESTのプロジェクトに応募したが、それは残念ながら採択に至らなかった。 そのため、おおむね順調に進展しているという評価を与える。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度にコロナビールスのために実施できなかった国外国際会議での研究発表を行い、また対応する計算機実験、論文の作成と投稿を行う。 主催しているGCTセミナーの継続を(コロナビールスの蔓延が解消した段階で)行うが、そこでは、理論計算機科学と表現論や量子代数において近年のブレークスルーとして大きな話題になっているMIP*=RE,すなわち多人数量子対話計算ではチューリングらの計算可能性限界を超え、計算可能でない、例えばチューリング機械の停止問題に対しても解決可能であるという成果についてのセミナーを実施し、本研究テーマで培った技法との関連や、今後の進展についての議論を行い、本萌芽研究からの学術の発展を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナビールスの蔓延のために2020年3月開催のEUROCGに採録された論文を取り下げ、会議出席をキャンセルした。また、その他の国内外の出張予定も取りやめ、海外からの研究者の招へいも中止した。 本年度は、旅費に使うのはコロナビールスの関係で予定が明確に立たないため、学生による計算機実験を行うための備品やソフトの購入とRA経費を中心に使用する計画である。
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