本研究は,物体表面に見える反射・透過像を能動的に制御するための理論や方法論を,総括的に構築することを目指すとともに,実物の作成実験によりその適用効果を検証するものである.具体的には,微細な幾何構造での透過と遮蔽で生じるモアレや,曲面の鏡面反射で生じるハイライトや映り込み像に関して,それぞれの動き制御理論の確立を目指している. 本年度は,透過と遮蔽のよる像(モアレ)の動き制御に関して,主として実用的な応用の検討を行った.曲面の鏡面反射で生じるハイライトや映り込み像に関しては,基礎的な検討を行った.また,これと並行して,様々な対象に関して実物とCGの見え方に関する研究を進めた.以下に成果を示す. 1.モアレの動き制御理論の応用面での検討: 格子縞などの2 次元微細幾何構造を2 層に重ねた場合に生じる各種モアレについて,実用的な応用の一つとして,文字を主体とした白黒の掲示板に色による動きを付加する手法を検討した.微細構造の位相設定ならびにコントラストの局所設定により,モアレを任意の範囲で局所的に生成させ,それを組み合わせて回転,渦,収束,発散,落下,波など,種々の動きの生成が可能となる.これを掲示上の特定文字や部位にカラーで適用し,見る人の目を引く表示を行うことが確認できた. 2.曲面の鏡面反射で生じるハイライトや映り込み像の基礎的検討: 反射の原理に基づき,映り込み像の形状や動きに関して,基礎的な数式群の導出を進めた. 3.実物とCGの見え方に関連した種々の研究: 物体やCG画像が微細構造をはじめとする様々な要因により,一部が強調されて見える現象や,本来の形状や動きと違う見え方をする現象の解明,ならびにその応用に関して,種々の研究を進めた.ユーザの好みを反映できる絵画風画像生成インタフェースや,不可能図形の新しい表現手法などの成果が得られた.
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