研究課題/領域番号 |
17K19977
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
増澤 利光 大阪大学, 情報科学研究科, 教授 (50199692)
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研究分担者 |
角川 裕次 大阪大学, 情報科学研究科, 准教授 (80253110)
首藤 裕一 大阪大学, 情報科学研究科, 助教 (50643665)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | アルゴリズム / 分散アルゴリズム / 分散システム / 個体群プロトコル / 動的ネットワーク / ハイブリッド移動モデル |
研究実績の概要 |
本研究では,移動パタンを制御可能な能動的移動ノード(ロボットやドロイドなど)と,移動パタンを制御できない受動的移動ノード(自律的に移動する人や動物に取り付けたセンサノード,水の流れや風によって運ばれるセンサノードなど)が混在するハイブリッド動的ネットワークのモデル化と,そのモデル上での分散アルゴリズムの基盤技術や設計法の確立を目指す.そのために,(1) 複数の移動モデルを含むハイブリッド動的ネットワークのモデル化(定式化),(2) 代表的なタスクに対する,ハイブリッド動的ネットワークにおける分散アルゴリズムの設計,および,(3) 受動的移動ノードで構成される動的ネットワークにおいて,(準)能動的移動ノードの導入効果の解明に取り組む. 課題(1)に関しては,昨年度に提案した重み線形交流個体群プロトコルモデル(移動速度を抽象化した重みを各ノードが持ち,交流(通信)確率がノード重みに比例するという個体群プロトコルモデル)について,その拡張版の検討,および,実際のネットワークとの適合性のシミュレーション実験による確認を行った. 課題(2)に関しては,個体群プロトコルモデルでの基本問題である,情報散布,リーダ選出,可換半群計算について,重み線形交流個体群プロトコルモデル上でのアルゴリズムの設計・解析を行った.ノード重みの活用法を工夫することにより,昨年度に提案したアルゴリズムの性能をさらに改善できることを示した.また,提案モデルの基礎となっている従来の個体群プロトコルモデル上のアルゴリズムに関する研究を進めた.また,能動的移動ノードの効果的な活用法を開発するために,モバイルエージェントに関する研究も進めた. 課題(3)に関しては,通常ノードよりも強力なノードを導入することの効果を検討し,アルゴリズムの性能改善を実現できることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3つの課題それぞれについて,計画通りに研究は進捗している. 課題(1)に関しては,個体群プロトコルモデルを基礎としたハイブリッド動的ネットワークのモデル化として,重み線形交流個体群プロトコルモデルの提案を終えた.また,さまざまな設定に対するシミュレーション実験により,提案モデルの実システムとの適合性を確認することができた.これにより,研究計画通り,この提案モデルを用いて,課題(2),(3)に取り組むことができている.さらに,提案モデルのさまざまな拡張についても検討し,今後の新たな研究展開の可能性を確認している. 課題(2)に関しては,提案モデル上で,基本的かつ重要な問題である,情報散布,リーダ選出,可換半群計算などに対し,分散アルゴリズムの設計・解析を行った.既存の個体群プロトコルを,ノードの重み(移動速度を抽象化したもの)を利用するように少し変更するだけで,より効率よく解決できる問題が存在することを明らかにできた.また,効率をさらに改善するために,ノード重みのより工夫した活用法を提案することができた.これらは,研究計画時に目指した成果であり,本課題に関する研究は順調に進展している.また,提案モデルでの分散アルゴリズムの基盤となる,従来の個体群プロトコルモデルおよびモバイルエージェントモデルでの分散アルゴリズムの研究を進めることができた. 課題(3)については,研究計画通り,今年度から取り組みを開始した.第一段階として,他のノードと特性が異なるノードを導入することの効果の検討を開始し,既に一定の成果を得ている.
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画では,平成31年度には課題(3)のみに取り組む予定であった.しかし,今年度の研究により,課題(2)について,さらに優れた成果を得られる可能性を見いだせたので,予定を変更して,平成31年度に,課題(3)に加えて課題(2)にも引き続き取り組む. 課題(2)に関しては,重み線形交流個体群プロトコルモデル上での分散アルゴリズムの設計・解析を引続き行う.このモデルの特性を活かした,分散アルゴリズムのさまざまな技法の創出を目指す. 課題(3)に関しては,特性の異なるノードを導入することで,より効率的なアルゴリズムを設計できることを既に示している.そこで,さまざまなノード特性を検討することにより,どのような特性がアルゴリズムの効率化に効果的かの解明に取り組みたいと考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画では,今年度はハイブリッド動的ネットワークの提案モデルである,重み線形交流個体群プロトコルモデルのシミュレーション評価のための計算機を購入する予定であった.しかし,理論研究で優れた成果を得られつつあり,理論研究を優先して進めたため,シミュレーションは大規模なものができておらず,現有の計算機で実施した.次年度は,大規模シミュレーションのための計算機を購入する予定であり,今年度に使用できなかった物品費は,来年度に使用する予定である. また,研究成果を発表するための旅費について,海外で開催される国際会議での発表3件を予定していたが,1件は国内開催の国際会議での発表となり,残り2件は次年度開催の国際会議で発表することとなった(内1件は既に採択が決定し,残り1件は査読中).このため,今年度に使用できなかった旅費は,来年度に使用する予定である.
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