研究課題/領域番号 |
17K19994
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
倉橋 節也 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 教授 (40431663)
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研究分担者 |
吉田 健一 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 教授 (40344858)
津田 和彦 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 教授 (50302378)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | 教育システム / 歴史シミュレーション / 家系図 / 家族システム |
研究実績の概要 |
初年度は以下の2項目を主として研究活動を実施した。 1)歴史データ分析のためのエージェントベース・データ同化モデルの構築:逆強化学習を用いて,データからシミュレーションモデルを構築する手法を提案し,実データでの分析を進めている。また,NKモデルを用いて,人と人の間の知識伝達コミュニケーションをモデル化することで,多様性交流と均一性交流の違いを明らかにすることができた。そして実態との関係を分析するために,国内の複数組織の知識移転について調査を行なった。調査した項目は、属性として年齢、性別、現部署,所属年数、雇用形態の4 項目である。また、交流状況として、グループ内スタッフと業務上コミニュニケーション頻度を収集した。そして、属性4 項目をクラスター分析して、各グループの組織内構造を数値化し,シミュレーションモデルとの関連を分析した。結果として,知識移転には多様な人材との交流が重要であることが示唆された。以上により,家系データを用いた帰納推論と,エージェントモデルを用いた演繹推論の結合を逆強化学習手法で実現する基盤を整えることができた。 2)族譜(家系図)の収集とデータ化:中国史の専門家とともに,東南アジア諸国に点在する華僑の族譜データを収集することができた。シンガポール(国立シンガポール大学),ベトナム(国立社会科学研究院漢南研究院),マレーシア(Centre for Malaysian Chines Studies,華僑会館)において,現在まで辿ることができる,規模の大きい華僑一族の族譜を収集できた。これらは,族譜を大規模に編纂する能力を有することから経済的にも社会的にも成功を遂げてきた一族であり,本研究の分析対象となり得ることが推定できる。特に,女性の記録が比較的多く残されている族譜がシンガポールで見つかっており,更にこれらを収集する必要性があることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
歴史データ分析のためのエージェントベース・データ同化モデルの構築は,逆強化学習手法を採用することで,実現の見通しが確実となった。この手法は,個々人が意思決定を行った結果の実データを用いて,その動機となる報酬値を推定するものである。既に収集済みの農業における農民の意思決定データを用いて,事前実験を行った結果から,本手法が,歴史データの分析にも適用可能であることが見出された。ただし,この手法は最適化モデルを用いる手法と,逐次演算を行う手法の2種類が存在するため,それぞれの特徴を見極めて分析をおこなう必要があることが判明した。H29年度では,最適化モデルの手法でン分析を行ったため,H30年度は後者の手法で取り組みを進める予定である。また,この進化計算手法を結合することで,ルールベースのモデル推定を行う予定である。これは,すでに実現している技術であり,大きな問題はない。 族譜データの収集は,予定通り,シンガポール,ベトナム,マレーシアの3カ国の有力なデータが収集できている。しかし,ベトナムのデータは量が多く,また女性の記録が比較的多く残された族譜が発見されてきているため,次年度でそれらの収集を行う必要がある。また,タイ,韓国,中国などの調査はまだ行っておらず,今後継続して,他国の華僑データを今後収集する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
1)族譜から家計データの抽出 昨年度で収集した族譜は,当時の中国語で筆記体で記述されているため,これを中国史の専門家の助けを借りて,数値データに置き換えることを行う。シンガポールで調査した結果から,女性の系図以外の記録を比較的多く含む族譜が発見されており,今年度にそれらの詳細な調査と収集を行う予定である。ただし,女性の記録は,系図としては存在しないため,関連する資料から出自を推定し,家系図に加える作業を行う。これらによって,優れた人材を育成するシステムの中に,女性のさまざまな役割が見出される可能性が増え,正確な推定を行うことができることが期待される。また,タイ,韓国,中国などの調査はまだ行っておらず,今後継続して,他国の華僑データを今後収集する予定である。 2)族譜から得られた家系データを用いて、データ同化モデルを構築 モデルは、家族構成員一人ひとりをエージェントして定義し、事前分析から得られている文化資本要素(知識文化資本・芸術文化資本)、文化資本伝達関数(一般化加法モデル・ルール)、家族関係ネットワーク(親子・婚姻関係)、外部教育要素(学校・サロン)、転居(勤務地変更)などをモデル化する。モデル推定には、パターン指向逆シミュレーション法を適用し、文化資本伝達関数のパラメータ、家族および外部教育の知識伝達パラメータなどをルールベースで推定する。また,動的な変化を捉えるための,状態空間モデルの適用可能性についても,調査および実験を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費の費用が予定よりも減少したため。 研究に関連する文献等購入に使用する予定。
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