研究課題/領域番号 |
17K19995
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
石川 智治 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90343186)
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研究分担者 |
辰元 宗人 獨協医科大学, 医学部, 准教授 (30296157)
長谷川 光司 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50272761)
牧 勝弘 愛知淑徳大学, 人間情報学部, 教授 (50447033)
三井 実 ものつくり大学, 技能工芸学部, 准教授 (70535377)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | 片頭痛患者 / 音過敏 / 生活音 / 音響的特徴 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、多様な生活音における快・不快評価実験を、片頭痛患者および健常者に対して実施し、両者の快・不快評価に差がある音源や、その評価の差に関連する音源の物理的な特徴を調査し、音診断や音療法に向けた音源の心理物理的な関係を明らかにすることができた。 具体的には次のような実験を実施することによる成果である。実験に使用した生活音は、先行研究と同様に、サウンドスープの概念を参考にした4カテゴリの生活音(生物の声:6種、自然の音:3種、情緒的な音:3種、騒音・サイレン音:8種)の合計20種類とした。被験者は、片頭痛患者50名(音過敏あり:29名、音過敏なし:21名)、健常者50名の計100名で実施した。実験実施においては、被験者は閉眼座位でヘッドフォンから流れる15秒の音源を聴取し、1曲ごとに快不快評価を実施した。各音源に対する快不快評価の尺度は9段階とし、音源を聴取した直後に評価した。その結果、片頭痛患者と健常者の快不快評価は、音源によって相違は見られるものの、概ね片頭痛患者の方が不快に評価する傾向が示された。また片頭痛患者と健常者の快・不快評価の差は、生物の声であるツバメやひぐらし、騒音・サイレンであるクラクション、踏切の音、救急車およびパトカーのサイレン音において統計的に有意になることが明らかになった。更に、音源の音響分析を行ったところ、音響信号上として400Hz近傍の信号のパワーと同帯域の振幅包絡の時間変動が小さい音源において、片頭痛患者と健常者の快・不快評価の差が大きくなることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定では、音源の種類と各音源の音圧レベルのみを調整パラメータとした音を制作し、音圧レベルに対する快不快評価の傾向から音診断や音療法に向けた音源の特徴の検討を計画していた。しかしながら、予備実験を進めていく中で、各音源の音圧レベルだけではなく、各音源の周波数成分などの音響的特徴の快不快評価への関与が示唆されたため、各音源の音圧レベルの調整による音刺激だけの検討では、一般性を保持した議論が困難であると判断した。そこで、平成29年度は、音源として使用している音響的特徴と快不快評価の関係の探究に注力し、より深化した音響信号の分析を実施することとした。その結果、音診断および音療法に向けた音源の心理物理的関係を明らかにすることができた。この関係を捉えた音源の作成と評価実験を実施することにより、当初に予定していた、音診断および音療法への実現に着実に近づくのではないかと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、まず平成29年に得られた、片頭痛患者および健常者の快・不快評価に差がある音源やその評価差に関連する音源の物理的特徴を踏まえた音源を製作する。次に、その音源を用いた快不快評価実験を実施し、非拘束な音診断の基礎要素および音療法の基礎要素を検討する。そして、それらの結果を踏まえて、音診断および音療法の実現を目指す。この研究の推進方策の中で、平成30年度は、片頭痛患者と健常者の快・不快評価の傾向が異なる音源とその音響的特徴(400Hz近傍の信号のパワーと同帯域の振幅包絡の時間変動の大きさ)に注目し、その検証を踏まえた音源の製作と評価方法の検討を行い、新たに評価実験を実施する。また、片頭痛患者の音過敏の有無にも注目した快不快評価の傾向の相違なども検討し、両者の評価の差異が大きければ、音過敏の有無にも注目した音源の特徴も検討する。更に、上記の進捗状況にもよるが、片頭痛患者と健常者の快・不快評価が明らかに異なる音源を用いて、聴覚野を中心とした生理計測を実施し、快不快評価との関係を分析する。その結果から、片頭痛患者と健常者の聴覚系高次レベルにおける神経反応などの差異や特徴を調査し、音診断における基礎要素を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験実施については、取得データによる分析の深化に注力したため、実験装置や分析用PCなどについては、先行研究の実験装置を継続使用することで対応した。本年度は、音源作成用PCやソフトウェア、および、生理計測用の装置などの購入に使用することを計画している。
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