研究実績の概要 |
平成31年度(令和元年度)は、片頭痛患者が日常生活においてノイズとして知覚していた音の特徴が、周波数に依存する(400Hz付近のパワーやその振幅の時間変動が少ない)という発見から、周波数成分の相違に注目した音源刺激の作成とそれらを用いた聴覚閾値実験および聴覚誘発電位(AEP: Auditory Evoked Potential)の計測・分析を実施した。その結果、聴覚誘発電位の総合的な信号分析方法の確立(音響雑誌[英文誌]採録)や、聴覚誘発電位の周波数依存性、聴覚閾値判断と聴覚反応との関係などを明らかにした(国内発表2件)。具体的には,250 Hz,500 Hz, 1000Hz, 2000 Hz, 4000 Hz, 8000 Hz のトーンピップ(長さ10ms,コサイン窓形状の立ち上り/立ち下り2ms)およびクリック音(矩形、長さ0.1 ms)の7種類の音源刺激を作成し,それらを聴取させた時の聴覚閾値を極限法により測定した.その後,被験者毎の各刺激に対する閾値から60 dB 上の音圧レベルで各刺激を提示し,その時のAEPである,聴性脳幹反応(ABR: Auditory Brainstem Response),聴性中潜時反応(middle latency response, MLR),そして聴性頭頂部緩反応(slow vertex response, SVR)を計測した.その結果,観察する周波数レンジが異なるABR,MLR,SVRの信号を同時に比較検討する分析方法を開発した.また,外耳道などの聴覚経路に関連してAEPの各成分に周波数依存性があること,そして,片頭痛患者と健常者の聴覚閾値に相違がある周波数帯域が存在すること,片頭痛患者と健常者の聴覚閾値の差とABRの第5波の潜時の差に相関があることなどを明らかにした.
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