研究実績の概要 |
研究代表者らは、時間長への順応によって主観的時間の伸縮(時間残効)を起こすことができる実験パラダイムを用いて、右下頭頂小葉が主観的時間を反映していることを示した(Hayashi and Ivry, under revision)。この研究では右下頭頂小葉のみならず左右半球の中後頭回と呼ばれる領域についても順応の効果が見られた。そこで本年度はこのデータをさらに解析し、これらの領域の解剖学的位置についてより詳細な同定を行い、また、右下頭頂小葉と左右半球の中後頭回の機能的接続について精査を行った。
まず、これらの脳領域の解剖学的位置を詳細に調べるため、皮質表面上に活動領域を投射して、Glasserら(2016, Nature)によって示された180の脳領域のどの領域にこれらの領域が相当するかを調べた。その結果、時間長への順応効果がみられた右下頭頂小葉領域のクラスターはPF、左右半球の中後頭回のクラスターはPGpおよびPGsに相当することが示された。
また、前年度に行ったデータ解析では、時間長に対する順応効果の大きさが右下頭頂小葉と左右半球の中後頭回との間で相関がなかったことから、これらは独立に機能していると考えられた。しかしながら、このデータについて課題試行間での活動のゆらぎの相関関係を調べると、右下頭頂小葉と中後頭回の間にもいくらかの相関関係があることが示されたことから、これらの領域間には機能的接続が存在する可能性が示された。これらの研究成果についても論文に盛り込み、国際学術誌に出版する予定である。
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