研究開発の目的は、手術後のできるだけ早い時期の筋肉の運動機能回復データを用いて、退院時の歩行を含む生活動作の機能回復予測を行うことである。総合せき損センターの臨床データの特徴は、26種類の筋肉の運動機能回復の時系列データや、多種類の生活動作関連尺度をのべ700人以上の患者に対して記録してきたことである。受傷時の損傷レベルからどのくらい機能回復するのかを、複数の説明変数をもつ重回帰解析を用いて予測するモデルを開発した。運動機能回復 の尺度である目的変数として、脊髄損傷の評価尺度:フランケル分類、ASIA運動スコア、機能障害尺度、FIM(機能自立度評価尺度)、MMT(徒手筋力テスト)、 Spinal Cord Independence Measure (SCIM)を用いた。受傷後、72時間、15日間、1月、3月、6月、12月の運動機能の尺度を評価した。説明変数は、患者の年 齢、受傷時の損傷のレベル、各筋肉の運動機能の尺度に関する時系列データである。各筋肉は僧帽筋、上腕三頭筋、大腿四頭筋、指伸筋のように、解剖学的に分 類される。多数の説明変数の組み合わせからなる複数の重回帰モデルを作成した。各予測モデルの性能は、Area Under Receiver-Operating-Characteristics Curve (AUC)を用いて評価した。説明変数が必要十分であるモデルを見つけるために、Akaike Information Criteriaを用いて説明変数の絞り込みを行った。26種 類の筋肉の運動機能データがあったが、実用的には、2-3h種類のデータで高い精度の予測が可能であった。
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