本研究では、「人の感覚能力を超えて触診するスレーブ型マイクロハンドロボット」の研究開発に取り組んできた。本研究の研究項目として、1)人の指感覚よりも高い性能をもつマイクロデバイスの導入、2)人の指感覚にないマイクロデバイスの導入、3)人の手がアプローチできない対象への触診への応用、を挙げている。触診機能の要素技術として、歪センサと温度センサ、生化学センサであるpHセンサが挙げられる。歪センサや温度センサに関して、本年度は、マイクロハンドへの集積化において顕在化した課題の解決に取り組んだ。 マイクロハンドを駆動する圧力駆動マイクロアクチュエータと動作のセンサ特性への影響や、繰り返し動作による特性変化について分析し、設計に反映する等の改良を進めた。pHセンサについては、引き続きTaO2をイオン感応膜として利用した薄膜センサの特性向上に取り組んだ。歪センサと温度センサについては、マイクロアクチュエータで駆動するマイクロハンドへの集積化を進め、並行して開発を進めてきたオペレータ用のインタフェースであるマスター部への信号提示にも成功している。オペレータがマスターインタフェースを通して触覚や温覚を感じることができるようになってきた。マイクロハンド本体、各種マイクロデバイスとその実装、さらには触診信号の処理に関する研究で成果を挙げることができた。 実現するマイクロハンドをスレーブ型ロボットとして生体を触診することが可能であり、内科および外科の内視鏡治療関係者からのアドバイスを受けて検討を行っている。医師が自らの手による従来の触診では体験したことのない生体情報を用いた診断方法を考えることができる。マイクロハンドロボットは、人の手が入り込めない空間にも進入できるため、触診することを想像したこともない部位にアプローチすることもできる。
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