研究課題/領域番号 |
17K20027
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
石原 進 静岡大学, 工学部, 准教授 (10313925)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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キーワード | ITS / 自動協調運転 / 障害物回避 / 生物群行動 / 車々間通信 / 車線変更 / 無線LANエミュレーション |
研究実績の概要 |
マクロレベルの車群行動シミュレータを設計した。本シュミレータでは追従走行モデルをベースとして、前方の障害物検知に基づく減速、車線変更、および車々間通信による通知に基づいて隣接車線からの車線変更受け入れ行動を行う車両行動モデルを含んでおり、車両走行ログの記録や統計処理、車両行動の可視化可能である。 上述のシミュレータ上に、個々の自動運転車両でのセンシング、あるいはマニュアル運転でのドライバの障害物認知のみに基づいて、車両が車線変更を行うモデル(局所的障害物回避モデル)と生物群行動を参考に設計した車々間通信を用いた大局的車両制御アルゴリズムに基づく車線変更行動のモデル(大局的障害物回避モデル)を構築し、二車線の道路での大局的障害物回避の効果を評価した。この結果、大局的障害物回避によって突発的な障害物発生時に渋滞が発生しにくくなることを確かめた。また、同手法の適用時における通信障害の影響についても評価し、通信障害によって効果の若干の低下は認められるものの、大局的な障害物回避行動によって、渋滞発生の軽減効果が得られることが確かめられた。一方で、車線変更先の車両の車線変更受け入れ行動の積極性が高いと、受け入れ側の車線上にいた車両の渋滞を誘発することが確かめられた。特別なチューニングをしなくてもこのような渋滞を回避できるようなアルゴリズムの開発が課題である。 Linux上で実現した車々間警告通知プログラムをシミュレータ上の仮想的な車々間無線LAN環境で動作させるためのシミュレーションプラットフォームの主要素技術、仮想無線LANドライバを設計・実装した。本シミュレーションプラットフォームは電波出力等無線通信パラメータの動的制御、受信電力に基づく動作の動的変更を行うIEEE802.11無線LAN利用システムのエミュレーションを可能とする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、1年目に多車線に渡る車両移動モデルの設計と基本的な自動協調運転による危険回避行動に関する車々間通信要件の調査を行うこととし、まず2車線のシナリオで戦略を設計評価した後に3車線以上に拡張する予定だった。また、攻撃や悪意ある車両が含まれない場合の危険回避のための通信要件・通信戦略の特定、電波妨害攻撃の影響を回避するための走行・通信条件の導出、危険回避のためのプロトコルおよび車両行動の対策について検討することとしていた。1年目には3車線以上の場合を含めた車両の行動モデルを設計済であるが、シミュレーション評価に関しては、2車線の場合のシミュレーション実施と結果の分析に時間を要し、3車線の場合までのシミュレーション評価には至らなかった。一方で、実働ソフトウェアとシミュレーションを組み合わせて評価を行うための環境構築は順調に進んでおり、仮想無線LANデバイスの設計・実装、評価とそれを用いたエミュレーション環境の基礎設計が出来ている。
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今後の研究の推進方策 |
2年目となる平成30年度では、前年度のマクロモデルのシミュレーションでの検討を発展させて、IEEE802.11pおよび可視光の物理モデル、攻撃モデルを含めた詳細シミュレーションをSpace-TimeEngineering社のシミュレータ、Scenargieを用いて行い、前年度に検討した危険要因回避のためのプロトコルの効果を検証する。また、プロトコルの基礎部分の実働ソフトウェアを実装し、前年度で構築したエミュレーション環境で動作検証を行う。また、偽情報配信、非協力危険要因を加えた場合の影響調査とその対策をマクロレベルのシミュレーションによって検討したのち、詳細シミュレーションによる評価を行う。また、前年度に検討が不足していた通信障害対策に関する検討をすすめるとともに、これまで2車線に限られていた評価を3車線に拡張する。これらを行った後に、以下の取り組みを行う。i)偽詳報配信、非協力のモデルを作り、様々な条件でのこれらの危険要因の影響を調査する。ii)危険要因の影響を回避できる走行・通信条件を導出する。iii)危険回避のためのプロトコル・車両行動の対策を検討する。これまでの研究成果をまとめ、IEEEVNC、Infocom等の国際会議、並びにIEEE Transactionson on Vehicular Technology等の論文誌で発表する。
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