研究課題/領域番号 |
17K20037
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
平野 高司 北海道大学, 農学研究院, 教授 (20208838)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | 森林生態系 / 炭素循環 / 土壌CO2フラックス / 落葉樹林 / 細根動態 / チャンバー法 |
研究実績の概要 |
本研究では,北海道の落葉樹林で土壌呼吸と細根動態を同時測定し,根呼吸をその構成要素(細根の維持呼吸,細根の成長(構成)呼吸,細根以外の根呼吸)に分離・定量化するとともに,維持呼吸と成長呼吸の変動特性や環境応答特性を詳細に解析し,根呼吸のモデル化を目指す。 調査地は2004年の台風によって風倒壊したカラマツ林跡地であり,倒壊後に表土除去された後にカラマツとシラカンバが再生し,現在は樹齢約10年の若齢木が点在している。薄い有機質土壌(A層)が火山噴出物(C層)の上に発達していたが,A層が除去されたためC層がむき出しになっている。埋土種子も除去されたため,草本類などの下層植生はほとんど存在しない。そのため,土壌有機物の分解(微生物呼吸)は少なく,その空間変動も小さい。また,根の密度は樹木個体から同心円状に低下する。 本年度は,採択前から研究を開始し,5月に調査プロットを設営した。10本のカラマツ個体を選び,各個体から距離1 mと2 mの地点にそれぞれ2つの調査点(チャンバーカラー)を設置し,携帯型チャンバーシステムにより土壌CO2フラックス(土壌呼吸)を無積雪期に2~3週間おきに測定した。また,7月に2つの調査点のうちの1つで根切りを行い,カラー内の根呼吸を排除した。さらに,残置された枯死根の分解によるCO2放出量を評価するために,ルートリターバッグ法を適用した。得られた結果から,細根呼吸と微生物呼吸を評価した。一方,連続コア法などを約2ヶ月おきに適用し,細根動態(成長,枯死,分解)の定量評価を行った。 11月までの野外実験で得られた主な成果は,1)土壌呼吸に対する根呼吸の寄与が細根密度に依存する,2)地温と細根分解の間に正の相関が認められた,3)根呼吸と細根バイオマスとの間に正の相関が認められた,の3点である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請課題の採択の連絡があったのが6月末であり,それを待っていると今年度の成長季節の調査に間に合わなかった。そのため,校費を使ったり,他の研究のために調達した物品などを共用したりして4月から準備を進め,5月に野外実験を開始した。そのため,今年度についても春季から野外調査を行うことができた。なお,野外実験は積雪が始まる11月中旬まで行い,特に問題なく観測データを取得することができた。また,データを解析した結果も納得のいくものであり,「おおむね順調に進展している」を自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画調書および交付申請書に記載したように,来年度以降も今年度と同様に,無積雪期に野外実験を継続する。得られた豊富なフィールドデータを解析し,学会等で成果発表を行うとともに,最終年度(平成31年度)には研究論文の執筆と投稿を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 成長季節の始まり(5月)から野外実験を開始したため,研究プロット設営のための消耗品を別財源(運営交付金等)で準備したり,既存のかなり古い部材を代用したりした。また,CO2分析計や土壌水分計を購入する予定であったが,既存の物品を修理することで利用できたため,購入しなかった。これらの理由で物品費が大きく減額となった。旅費についても,日程の都合で予定していた学会発表ができなかったことなどがあり,減額となった。さらに,その他の経費として土壌試料の分析経費を想定していたが,同じサイトで以前に得られた結果で代用できることがわかったため,新たな分析を行わなかった。 (使用計画) 修理したCO2分析計の状況が悪化したため,新年度早々に新規に購入する予定である。また,古い部材等を利用して設営した調査プロットについても,新年度に部材を購入して更新する予定である。さらに,本研究に参加する学生が一人になるため,データ解析のための謝金(アルバイト代)を増額する予定である。
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