本研究では,北海道苫小牧市の若齢林で土壌呼吸(土壌CO2フラックス)と細根動態(バイオマス,成長)を無積雪期間に同時測定した。得られた土壌呼吸を根呼吸と微生物呼吸に分離し,さらに根呼吸をその構成要素(細根の維持呼吸,細根の成長呼吸,細根以外の根呼吸)に分離・定量化するとともに,細根の維持呼吸と成長呼吸の季節変化や変動特性,環境応答特性を詳細に解析し,細根呼吸のモデル化を行った。調査地は2004年の台風によって風倒壊したカラマツ林跡地であり,倒壊後に表土が除去された後にカラマツが再生し,現在は樹齢13年以下の若齢木が繁茂してきている。薄い有機質土壌(A層)が火山噴出物(C層)の上に発達していたが,A層が除去されたためC層がむき出しになっている。埋土種子も除去されたため,草本類などの下層植生はほとんど存在しない。そのため,土壌有機物の分解(微生物呼吸)は少なく,その空間変動も小さい。また,樹木根の密度は樹木個体からの距離にともない同心円状に低下した。昨年度までに得られた成果から,年間値において根呼吸が土壌呼吸に占める割合が25%であり,カラマツの根呼吸のうち30%が細根の成長呼吸,44%が細根の維持呼吸,26%が太根の維持呼吸に分配されることがわかった。この結果には,土壌水に含まれる栄養塩吸収に関わる呼吸が含まれていないため,2019年から新たに樹幹流量の連続観測も開始した。本年度は昨年度に引き続いて4~11月に土壌呼吸と細根動態に関する野外実験を行い,土壌呼吸,細根成長,樹幹流量の間に同様の季節変化が認められることが示された。現在,樹幹流量を加えたモデルによる根呼吸の分離を行っている。
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