研究課題
化学物質の感受性の差は種により数千倍に及ぶこともあり、実験動物を用いた毒性試験の結果を野生動物にそのまま外挿することは難しい。特に希少トッププレデターでは、化学物質の影響を直接観察できるin vivo実験は実質困難であり、それゆえ化学物質感受性の“種差”を適切に評価できる実験系は未だ存在していない。そこで、本研究では、化学物質感受性決定因子である薬物代謝“Metabolism”を、野生動物の皮膚線維芽細胞より作成した誘導性肝臓様細胞(iHep)を用いて評価することを試みた。2018年度は2017年度に引き続き、①野生動物の皮膚線維芽細胞の培養およびiHep細胞への誘導因子の選定および、②肉食動物の薬物代謝第II相抱合酵素活性、特に硫酸抱合酵素(SULT)の評価を実施した。先ず、①の実験では、野生動物の線維芽細胞として、エゾヒグマおよびツシマヤマネコの保存に成功し、その後のiHep誘導実験に供試した。ただ、いくつかの誘導因子を導入し、誘導を試みたが、成功には至らなかった。②の実験では、野生動物の中で、鰭足類動物において、エストロゲン代謝に重要な分子種であるSULT1E1が遺伝的に欠損している事を明らかにし、多くの化学物質に対して高感受性を示す可能性を示唆する知見が得られた。
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