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2018 年度 実施状況報告書

難分解性溶存態有機物の消失経路-泡による粒子化-

研究課題

研究課題/領域番号 17K20040
研究機関筑波大学

研究代表者

和田 茂樹  筑波大学, 生命環境系, 助教 (60512720)

研究分担者 佐藤 雄飛  公益財団法人環境科学技術研究所, 環境影響研究部, 任期付研究員 (50708120)
研究期間 (年度) 2017-06-30 – 2020-03-31
キーワード放射性炭素同位体 / 泡 / 粒子化 / 難分解性溶存態有機物
研究実績の概要

本研究は、難分解性溶存態有機物が泡にトラップされた粒子化する可能性を検証するものであり、初年度には、泡にトラップされた有機物の放射性炭素同位体を測定した。その結果、年代はほぼ現世であり、難分解性溶存態有機物の粒子化を確認することはできなかった。放射性炭素同位体比は、炭素の年代推定を行うほぼ唯一の手段である一方、有機物の構成要素を特定することは難しい。そこで、泡によりトラップされた有機物の起源や粒子化の過程を予測することを目的とし、有機物の組成の詳細情報として脂肪酸組成の解析を実施した。試料は泡にトラップされた有機物と海水中の懸濁粒子を用いたところ、飽和脂肪酸の一つであるパルミチン酸の割合が、泡にトラップされた有機物で有意に大きいことが示された。しかし、それ以外の脂肪酸に関しては明確な差を認めることはできなかった。
脂肪酸に明瞭な差がみられないこと、トラップされた有機物の放射性炭素同位体がほぼ現世レベルであったことは、比較的フレッシュな有機物が非選択的に泡にトラップされ粒子化することを意味している。粒子化する物質の構成要素の一つには、粘着性の有機物があげられる。これらが他の有機物を非選択的に巻き込みながら、泡の中に凝集していることが予測される。今後は、より幅広い試料に対して再度放射性炭素同位体比測定を実施するとともに、脂肪酸以外の有機物構成要素の測定を行い、泡の中に有機物がトラップされる過程の解明に取り組む。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

初年度には、ろ過海水をバブリングして泡による粒子化をとらえる予定であったが、粘着性物質の粒子化によって十分なろ過量を確保することができなかった。しかし、海面に浮遊する泡にトラップされた有機物を用いることで、放射性炭素同位体比の測定を予定通り実施することに成功した。年代測定の結果としては、ほぼ現世であり仮説と異なるものであったが、現世の有機物は脂肪酸をはじめとした生体構成成分を多く含むことから、脂肪酸測定を実施した。これらの結果により、世界で初めて海面の泡にトラップされた有機物の年代および組成の解析を行うとともに、粒子化の過程に対し非選択的凝集という可能性を提示することに成功したことから、計画の軽微な変更を伴いながらも当初計画に沿った研究の遂行を行うことができたと言える。

今後の研究の推進方策

泡にトラップされた有機物は場所や季節によって異なる可能性がある。そこで、幅広い試料を用いて放射性炭素同位体比測定に再度トライする。仮に古い年代の炭素が粒子化する可能性を示すデータが得られた場合には、その起源となる溶存態有機物の放射性炭素同位体比測定を実施する。一方で初年度の試料と同様に、現世の有機物がトラップされている場合には、アミノ酸をはじめとする生体構成成分の測定を並行して実施し、泡にトラップされた有機物の起源や動態を明らかにする。

次年度使用額が生じた理由

泡にトラップされた有機物の放射性炭素同位体比に関して、加速器質量分析計を用いた測定が必要となる。本研究では、原子力開発機構の委託分析の公募に採択され、測定を依頼していたが、加速器質量分析計の分析ラインのトラブルにより、測定が年度を超えることとなった。この分析は、1試料あたり数万円のコストがかかるものであり、そのために予算をキープしていたが、測定が年度を超えることになったため、未使用の予算が残ることとなった。現在、測定は進んでおり、順調にいけば5月ごろにはデータを出していただける予定となっていることから、その際に支出を見込んでいる。

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公開日: 2019-12-27  

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