研究課題/領域番号 |
17K20047
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
柏田 祥策 東洋大学, 生命科学部, 教授 (20370265)
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研究分担者 |
宮西 伸光 東洋大学, 食環境科学部, 教授 (80372720)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | メダカ / 二酸化チタン / 細菌叢 / 酸化毒性 |
研究実績の概要 |
本研究では,ルチル型TiO2 NPsの水環境における生態リスクを評価するために,メダカを用いてTiO2 NPsの酸化ストレス,細胞毒性等を評価すると共に,生物の健康維持等に関わるとして近年注目されている腸管粘膜および表皮粘膜に棲息する細菌叢に対する影響についても検討した。メダカ孵化仔魚に対するTiO2 NPsのLC50値は >10 mg/Lであった。酸化ストレスについては,SODはミトコンドリアおよびサイトゾルにおいてTiO2 NPs曝露による誘導活性は観察されず,MAD濃度およびATP濃度にも変化は認められなかった。しかし,CATについては誘導活性が一部観察された。菌叢解析の結果,メダカ腸内細菌叢はTiO2 NPs曝露によって変化を受けなかった。一方,表皮細菌叢については,綱レベルでは対照区および曝露区ともにGammaproteobacteriaが最優占(それぞれ52.1%および42.6%)であり変化はなかったが,対照区で占有率2位のFusobacteriiaは,曝露によって占有率が27.3%から5.3%に減少した。また占有率3位のBetaproteobacteriaは0.2%から10.1%に増加した。種レベルでは,対照区で最優占種であったCetobacterium someraeの占有率は,曝露によって37.2%から2.7%に減少すると共に,それ以外の菌叢が増加していた。本研究の結果,TiO2 NPsはメダカに対して急性毒性および酸化ストレスは低いが,メダカ体表皮粘膜の細菌叢に変化を与えることが明らかとなった。魚類の体表皮粘膜には抗体や抗菌ペプチドなどの防御因子が含まれ,魚類の免疫機能に重要な役割をもつとされる。今回,メダカの表皮細菌叢にTiO2 NP曝露による影響が見られたことから,TiO2 NPがメダカ表皮の生体防御機能に影響を与えることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に従い,順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度はMALDI-TOF-MSによる分析,SP-ICP-MS分析およびRNAseq解析に取り組む予定である。
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