研究課題
平成30年度に行った海氷生成過程のビデオ映像解析から、本研究課題初年度(平成29年度)に試作した装置では撹拌子の上部と下部で発生させた乱流場に偏りが生じることが分かり、現場における海水の混合状態を再現していないという問題点が判明した。平成30年度には、この問題を解決するため、上下両面に羽をつけた撹拌子に変更を加えた改良型海氷生成装置を計6基作製した。令和元年度に行った海氷生成実験では、乱流場に偏りがほぼ解消され、現場における海水の混合状態を再現しているものと考えられた。南極海で海氷が生成される主要な場所は、大陸氷床上から吹く極めて寒冷な風(カタバ風)にさらされる大陸沿岸海域と考えられている。カタバ風の強度は、沿岸海洋における混合強度に影響を与える。そこで、令和元年度には、混合強度を変えるため撹拌子の回転速度を100、200、300、400、500及び600rpmに設定し、低温実験室内(暗条件下)で同時に海氷生成実験を行った。なお、添加した植物プランクトンは、平成29年度に採集した南極海季節海氷域で優占する植物プランクトン株を用いた。生成された海氷中のクロロフィルa濃度を測定したところ、混合強度が強いほど海氷中に取り込まれる植物プランクトン量が高くなる傾向があった。この結果は、南極海の現場においても、カタバ風の強い海域ほど大量の植物プランクトンが生成される海氷に取り込まれている可能性を示唆する。南極海における海氷は、カタバ風の強い沿岸域が主要な生成海域と言われており、ポリニア海域として知られている。ここで生成された海氷は、カタバ風により沖合(低緯度側)に運ばれる。従って、本研究結果は海氷生成とともに有機物の水平輸送が起こり、その有機物量はカタバ風の強度に依存することを意味する。今後の南極海における炭素循環や食物連鎖の研究に新たな道筋を提案するものとなった。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 4件)
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