平成29年度に製作した二酸化炭素15μm吸収帯を観測波長とする赤外線カメラについて、カメラ全体の温度を一定に保つ構造に改修し、平板黒体により校正を行った。改修した赤外線カメラと超音波風速温度計(2種)、極細熱電対、マイクロ波放射計、現業観測用通風筒との野外相互比較観測を2018年4月から2019年1月まで実施した。赤外線カメラの観測期間は10月以降である。結果は以下のとおりである。(1)赤外線カメラの測定値は気温と高い相関を得たが、平板黒体で校正した値と大きく異なった。原因は特定できていない。(2)超音波風速計の気温(音仮温度)測定値は強い(機器)温度依存性を持つ。(3)地上設置マイクロ波放射計は日射影響の無い地上気温推定が可能である。ただし直接水平方向を測定することは難しく、低仰角の観測から水平方向に外層して地上値を得る必要があり、細かい変動の把握も困難である。(4)極細熱電対は日射影響が0.1℃以下の測定ができていたが、期間中に大きく特性が変化した。温度検出部分(データロガー)の特性変化が疑われるが、問題を特定できていない。(5)良好なデータが取得できたと判断される期間で、現業観測用通風筒の日射影響を、最大日射輝度(~1000Wm-2)でおおよそ0.3℃程度と見積もった。このような絶対的見積もりはこれまでなされたことがない。 製作したカメラは二酸化炭素を可視化しうるものであることから、火山周辺で窒息事故を引き起こす二酸化炭素の監視への活用を検討するため、高原山の火山噴気地帯において観測を行ったが噴気は可視化されなかった。噴気と、環境の気温との温度差が小さかったことが原因として考えられた。また、温室効果で大きな役割を果たす二酸化炭素の射出する赤外線を可視化し、さらに化石燃料燃焼による二酸化炭素の発生過程も可視化する地球温暖化のアウトリーチのため演示教材提案を行った。
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