研究実績の概要 |
これまでに我々は、iPS細胞の点突然変異の解析のため、全ゲノムシーケンシングのスタンダードとなっている、イルミナ社のショートリードシーケンシング(HiseqX, 151bp-paired end, 1サンプルあたり90Gb以上)を実施してきた。今回、X線により高い頻度で形成されることが予想されるdeletionを定量解析のターゲットにするため、上記データを用いたinsertion/deletion (INDEL)の検出、スクリーニング、そして検証を試みた。ショートリードシーケンスを用いたINDEL解析では、想定する塩基長によって異なるプログラムを用いる必要がある。つまり、1塩基置換であるSNVと異なり、1種類のソフトウエア、あるいは条件で網羅的に検出できるソフトウエアは存在しない。また、それぞれ検出した結果は、偽陽性を多く含むため、細胞間の変異の定量的比較のためには、それら偽陽性を除くスクリーニングシステムの構築が本解析成功の鍵と考えられた。まず、CLC genomics workbenchを用いて、検出効率が比較的高いことが知られている100bp以下のINDELの検出の条件検討を行った。iPS細胞株の解析において、親体細胞、および、同じ親体細胞から樹立した姉妹株を比較することにより、効率よく偽陽性を排除することが可能となった。更に、目視により、アラインメント異常による偽陽性の排除を行った後、75カ所のサンガーシーケンシングを行った結果、全て正しく検出されていることが確認できた。目視確認によるアラインメント異常の排除のステップは、非常に労力がかかるが、目視に代わる手法は構築できていない。この手法を用いて、これまで樹立したiPS細胞におけるDNA損傷の結果生じるINDEL変異の詳細を解析中である。
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